もうだいぶ前、娘がハリー・ポッターに夢中になっていた時もどこ吹く風、私にとって食わず嫌いな「ファンタジーもの」。
そんな私ですが宝塚によって一気にファンタジー好きになりました!
という展開になる事を期待していた「ほんものの魔法使」ですが・・・「どこ吹く風」が「ここ吹く風」にはなりませんでした。
私が好む「人間の業」を取り上げているのはわかりましたし、不満があるってわけではありません。だけど感動もなかったんです。
ここ最近、配信で観劇した「その他の劇場」ものには随分、心を揺り動かされました。
つまらぬプライドのために幸せを逃した女を憐れんだり(感想記事)、絵の才能こそあるもののズルく弱く甘えん坊な男に憤ったり(感想記事)、あるいは、押し付けがましいストーリーだと責めたり(感想記事)。
プラスというよりマイナスの感情だったんですね。
ですが今回の公演を通し、たとえマイナスではあれ刺激を受ける事を私は観劇に求めているんだと気付きました。
木村信二さんを責めるつもりはありません。「鳳凰伝」や「蘭陵王」は好きな作品ですし。
というわけで・・・
ストーリーではなく、ジェンヌさんの感想に励ませていただきます。
何よりも思ったのは、魔法使いないし手品師といった設定が、朝美絢さんにとてもフィットしているって事。
宝塚の男役としては小柄な印象が強く、美しすぎるお顔ゆえ男くさい男役というより中性的、ないし女性的な男役と私は感じていまして、そんな朝美さんへの当て書きじゃないかと。
トップスターになる可能性がある小柄な男役として私がパッと浮かぶのは桜木みなとさん、朝美さん、和希そらさん(以上学年・成績順)なんですが、桜木さんと和希さんがワンツーで東上した「壮麗帝」はキャラ設定にせよ衣装にせよ、小柄な男役にはとことん不利に感じたんですね(感想記事)。
その点、魔法使いはキャラにせよビジュアルにせよ小柄な男役にとても有利だったのではないかと。
縣千さんは犬の役でしたがちょっと苦しかったですね。どう忖度しても犬には見えないので。
しかしながら私の中で「宝塚はこうゆう事をやる」という前例となり、マンガで予習した星組の次期公演「柳生忍法帖」に登場する天丸・地丸・風丸という利口な大型犬3頭を男役のジェンヌさんが演じるんだろうという覚悟は出来ました。
重要な登場人物ならぬ登場犬ではあるものの、「宝塚がジェンヌに犬を演らせるか?名前はそのままでも人として演らせるんじゃないか?」って思っていたんですね。ですがきっと、犬として演らせるのでしょう。
事実上のナンバー3だった華世京さん。
あんなピエロのような格好では顔を覚えられないと思いきや、ちゃーんとラストでカウボーイのようなお姿で出てくれて、バッチリ覚える事が出来ました。歌も上手いし今後皇太子、じゃなかった御曹司街道を歩んでいくんでしょうね。あんまりにも目立つ抜擢では叩かれやすいからこの度は3枚目役になったのかな、って気がしました。
ヒロインの野々花ひまりさん。
「歌、上手いなぁ」って言った私に「新公でクリスティーヌしているからね」と娘。もう別に、娘の方が詳しくっても悔しくとも何ともありません。
とはいえ口を挟まれ続けるとムカついてくるかもしれないので娘には言わなかったけれど、野々花さんは歌も演技も上手く滑舌良好であるもののどうも「演技してます!」っぽいとでもいいましょうか、ナチュラルさに乏しいように私は感じました。
ナチュラルだけど滑舌がイマイチで台詞が聞き取りにくいジェンヌさんはパパパと数名頭に浮かぶのですが、逆のタイプのジェンヌさんは私にとって初体験でした。
と・・・
取り留めもなくいろいろ書きましたが、
結局やっぱり、
「私には、魔法はかからなかった」
のひと言に尽きる、作品でした。
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