「宝塚歌劇団の経営学」を辛口評価してみる

宝塚歌劇団

読者さんからお勧めいただいた「宝塚歌劇団の経営学」。今年の2月に発行されたばかりで、著者は森下信雄さんという「元・宝塚総支配人」だそうです。

読者さんってば、勧めてくれたくせに「たーさんの好みではないかも(原文ママじゃなく、意訳)」という添え書きがあったんですね。
この添え書きで購入を決意しました。
宝塚の経営うんぬんより、私という人間がブログを通してどのようにこの読者さんに伝わっているかを知りたくなったんです。

結果・・・
当たってる!当たってましたよ(勧めてくれた読者)さん!
ブログを通して私の人柄がちゃーんと伝わっているんですね。
この本、めっちゃ、私の好みじゃなかった。

あくまで「私にとって」ですが、この本は・・・
おもしろくないし、さしてためにもならないし、いろいろ押し付けがましい。
苦手中の苦手な本でした。
メリットとしては、何となく感じていた「宝塚の経営陣はきっと偉そうなんだろうな」な予想が、当たっていると知った事くらいかなぁ。

読み終えたばかりなんですが記憶が消えぬうちにサクッと、私の感覚で感想を述べてみます。

森下信雄「宝塚歌劇団の経営学」

熱心な宝塚ファン向けではない

この本ねぇ、熱心な宝塚ファンのために書かれた本じゃないような気がします。
180ページあたりで、宝塚の経営陣がジェンヌさんのファンクラブをどう活用しているかを述べていますがこれ、「活用」というより「利用」という方が近いんですね。
ファンにジェンヌさんのオフをお世話させる事により宝塚は、コストを最小化してチケット販売する目標を達成しているんだそうです。
ファンクラブの説明については心理学的な要素もあり納得はするんですが、私がかつて好きだった行動分析学の本には、相手を操作するにあたり、ネタバレはタブー中のタブーと書いてあったはず。活用なり利用なり操作なりしたい相手に思惑がバレてしまえば、たちまち効果は失せるとあったような気がするんですよ。

本性を伏せたままお互い持ちつ持たれつをキープするのが運営陣とファンクラブ幹部の関係じゃないですか?もしそうなら、暴露めいた事はしない方が良いような気がします。
この本には、私にとって「もし自分がファンクラブ幹部だったら、元がつくとはいえ経営陣がこんな事を書いたら悲しくなるだろうなぁ、、、」な文面がありました。

ライトな宝塚ファン向けでもない

ファンクラブに入るほどじゃない宝塚のライトファンにはまだ、良さそうかもしれません。まさに私がこういったライトファンです。
けれど、宝塚ライトファンの入門書・・・とは言えないかな。
宝塚の輝かしい経歴をクドクド披露するにあたり、ベルばらは何度も持ち出しているのにエリザベートのエの字も出てこないんですよ。エリザベートをきっかけに宝塚ファンになった身には残念です。
はっきり言ってベルばらはもう、むっちゃ昔の事。エリザベートすらレガシーになりつつあるのに。

それでも自画自賛しているうちはまだいいのですが、AKBの戦略を失敗例として何度も持ち出しているんですね。なんかの仇?ってほどに。何度も出す必要はなかった気がします。

あと、46ページでは宝塚作品の内容について、芸術性をあまり高めるとファンが理解できなくなるからそんな事しなくていい、といった事を書いているんですね。
これ・・・なんか、ファンをバカにしていません?
私自身「難しい作品は嫌!」なんて記事に書いていたりはするんです。
ですが経営側から「うちのファンは難しい作品を理解出来ないから芸術性を高める必要なんぞ無い」って言われるとなーんか、ひっかかります。

経営学の入門書としても疑問

経営学の入門書としても、どうかなぁって思ってしまいます。

53ページにいきなり説明もなく「サンクコスト」なる経済用語が出てきまして、まぁイマドキ、ネットですぐ調べる事は出来たんですがその後65ページに「サンクコストとは・・・」と解説がありました。
匿名の宝塚ブロガーの記事なら文章が多少ちぐはぐしていても気にならないけれど、しおり紐のついたハードカバーの本に詰め込まれた、准教授をしている先生のご高説なのですから、文章の順番には気をつけて欲しかったです。

他にもSPA(157ページ)やチャネルマネジメント(159ページ)、CS(180ページ)、LTV(186ページ)といった、私は知らなかった経済用語が並んでいましたが、これらの解説はなし。なので経営学の入門書とはならないような気がします。

ただ・・・
夫と私が、娘を勉強の出来る賢い子にしたくて費やしたお金や時間ってまさに、サンクコストなんですね。それはよーーーく、わかりました。「大金をドブに捨てた」よりは随分エレガントですね。
ちなみに森下さんいわく、推しのジェンヌさんをチェンジするのはサンクコストの発生になるんだそうです。

個人事業主の役に立たない

果たしてこの本は一体、誰のために書かれているんでしょう?
経営学ではあれ、宝塚の独自っぷりをエンエンと述べているから、普通のお店などを経営している人の役には立たないし。この事は森下さんご自身にもわかっているような気がします。

何かを経営なり運営するにあたり、ターゲットを決めるのって大切だと思うんです。本なら、どんな人に読ませたいかを決めて書かなくちゃいけないんじゃないかと。
森下さんは経営学のプロなのですから、ここは譲れないはずなんですが・・・

私には、森下さんがこの本をどんな人達のために書いたのか、最後までわかりませんでした。

難読単語の羅列は何のため?

ついでにもうひとつ残念だった事を述べますと、この本、むずかしーい単語が多いんです。
難読単語もまた、イマドキですから、ネットで調べる事は出来たんですよ。だけど文脈的にこれらの単語を使う必要性を感じませんでした。
以下に私が読めなかった単語、意味を知らなかった単語を、出ていたページとともにご紹介します。

・奇貨(きか)P78
・沃野(よくや)P84
・論を俟たない(ろんをまたない)P143
↑「ろんを」は読めたけど「またない」が読めなかった。意味も知らなかった。
・趨勢(すうせい)P154
・膾炙(かいしゃ)P206、P236

ね?どれも難しくないですか?
まぁせっかくのご縁だったのですから、少しでも脳内に定着するようにこれらの単語を使って文章を作ってみました。

「関西の、たー」はブログを奇貨として日常生活の鬱憤を晴らそうとしている事は論を俟たない。憂さ晴らしの場として沃野が広がる事を願っている。重心が宝塚ではなく日常生活の愚痴に偏ったこの趨勢を、ふたたび宝塚に戻す事はおそらく、ないだろう。ブログの内容が「管理人ファースト」である事は一部の読者に膾炙しているのだから。

間違っているかもしれませんが許してくださいねw

まとめ

というわけで、あくまで私の感覚ですが・・・
この本は、森下さんの自己満足本のように感じました。
宝塚歌劇団や阪急交通社の関係者に、マル秘扱いで読ませるには良いかもしれません。

Bitly
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コメント

  1. シイこざくら より:

    こんにちは。
    本のご感想すごくおもしろかったです。おもしろくて何回か読み返しました。
    そして本のひどさにびっくりしました。
    取り敢えず森下某という人があんまり頭がよくない人ということがよく分かりました。

    学生時代の恩師が「なんでもないことを難しく言うのは出来の悪い証拠だ」と言ってましたよ♡ たしかに、大学院出たての若い先生などは専門用語をごちゃごちゃ説明していて、偉い先生ほど難解なことを易しい言葉で説明してくれた気がします。

    たーさんの最後の例文も最高ですね。爽快です!

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      シイこざくらさん、大学院出たての若い男性というと、どこかの国のプリンセスの恋人を思い出します。専門用語まみれの、28ページにも及ぶ文章を発表したそうで。「理解してくれる人がひとりでもいれば」らしいですが、だったら読みやすくて短い文書にまとめないとね。私は読んでませんし、読む気にもならないです。
      森下さんは関学の大学院を出ているそうですが、もともとは駅弁なんですよね。なので私とは駅弁仲間でね、親しみを感じていたんですけどね・・・
      もう宝塚の人ではないのに、宝塚でのキャリアにしがみついているような気が、私は、しました。現在のお勤め先である大学での自己紹介にも宝塚の事を載せていますし。
      大学での授業でも宝塚を持ち出しているのかな?楽しい授業なのかな?いろいろ気になりました。

      いつもありがとうございます。
      この記事を書いたあと夫がご機嫌ナナメになってしまい、パソコンから遠ざかっていました。お返事が遅くなってしまいすみません。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  2. めい より:

    前著の「元・宝塚総支配人が語るタカラヅカの経営戦略」のほうがまだ面白かったです。

    具体的なOGさんとの話も出てきましたし
    宝塚歌劇での良い作品とは脚本が素晴らしい等ではなく、トップスターが輝いて見える作品
    だということで、なるほど~と思いました。

    まぁ、この本も「元・・・」も私は図書館で借りて読んだので、うろ覚えですが。
    (特に今回のは、買うほどの値打ちを感じません)

    以前に所属していた宝塚の内情を材料に商売しているという点では、他のOGさん達(亜蓮冬馬さん等)と同類ですね。

    難しい言葉を多用されるのは、自分を偉く見せたい願望がおありなのかもしれません。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      「日々の色彩」管理人めいさん、いつもありがとうございます。
      森下さんは2011年に宝塚を退職し、2015年に前書を出版したそうですね。脚本の事など、内容的に今回の本とかぶっていそうです。
      宝塚の新しい情報が入ってこないのにこの度また宝塚本を出したのは、退職後10周年記念かな?暴露めいたところはあるけれど、今では通用しない古い情報かもしれません。

      難しい漢字を使うのがお好きなのは、はい、何かしらのコンプレックスがあるのかもしれませんね。
      にしても、トップを始め男役を「虚構」と表現しているのが、私には合わなかった。
      輝きまくるスターさんたちを、「虚」の字を使って表現するセンスが私とは合わなかったんです。「フィクション」くらいで良かったんじゃないですかね?

      内容としては本じゃなく、ネットでの発信でも良かった気がします。
      本、それもしおり紐付きハードカバーの装丁にこだわったのも、情報の格や価値を表現するにあたり森下さんにとって重要だったのかもしれません。

      返信が遅くなってしまいすみませんでした。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  3. ゆい より:

    たー様

    痛快で面白い記事、本日もご馳走様でした。手に取って少しめくりましたが戻して正解でした。代わりに読んでくださりありがとうございます、そしてお疲れ様でした。

    自由に書物を出せる時代ですが、全く意味を感じない本も残念ですよね。たー様のおかげで沢山の方が読まずに済んだと思います笑 経営学より暴露本で売った方がまだ興味が湧きますが…

    あ、メルカリに出しましょう笑

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      ゆいさん、はい、今はだれでも文章なり動画なりを気軽に発信出来るようになりましたね。しかしながら本を出版するにはそれなりに覚悟が必要じゃないかと私は思っています。
      以前お世話になっていた方がとあるジャンル(かなり真面目系)の本を出版したのですが、その後ずっと何冊も持ち歩いていて、印税分をナシにした価格で売っていました。「赤字なんです」とこぼしていましたね。
      それでも、出版がらみでたくさんの方々とつながりが出来たし、記念パーティーも盛り上がったしで、一生の記念になったそうです。そこそこ高齢の方なので、ネット発信ではなく本にしたい気持ちが強かったのかもしれません。正直本の内容が特別素晴らしいとは思わなかったんですが「出版」についていろいろ感じる事はありました。
      もう何年も会っていないこの方を、森下さんの本を読んでやたら思い出しています。

      森下さんにとって宝塚時代のキャリアはたぶん、とても大切なのでしょう。
      何故やめたのか、いきさつを知りたいところですが・・・自分にとって都合の悪い事は暴露しないのかもしれませんね。

      私ね、メルカリはここしばらく、買うばっかりなんです。売るのは色々面倒くさくて。
      ひょっとしたら後から読み返すかもしれませんし、しばらくは本棚に置いておきます。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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