全体的に歌唱力ARIで華はナシ［夜明けの光芒キャスト感想］

ストーリーについてばかりの感想だった前回に続き今回はキャストについての感想を記事にしてみます。
といってもタイトルの通りなんですよね、キャストさんすべてに歌唱力も演技力もあったけれど宝塚らしい華やかさには乏しかったです。

これねぇ・・・
「夜明けの光芒」は作品そのものが陰鬱で損をしている上に、現在東京宝塚劇場で上演中の月組「Eternal Voice 消え残る想い」と時代背景が丸かぶりな事がトドメになっていました。
エタボの舞台は「ヴィクトリア女王統治下のイギリス」だとプログラムに明記されています。光芒はプログラムを買っていないんですが、原作「大いなる遺産」の作者ディケンズはイギリス人だし彼が生きた1812～1870年はヴィクトリア女王が生きた1819年～1901年と被りまくりなんですよ。ディケンズの半自叙伝だという「大いなる遺産」はまず間違いなくエタボと同じ時代でしょう。

それゆえエタボの主役な月城かなとさんと光芒の暁千星さんの服装が被っているんですね。どちらも暗い色をしたどっしりとしたマントで体を覆っています。
ついつい比べちゃう。
ダンスはどちらもほぼないので有利なはずの暁さんがアピール出来ないし歌唱は月城さんも暁さんもそれぞれの良さがあります。
つまりは
顔
だけの比較になっちゃうんですね。となると勝敗は明らかでしょう。

もったいない、ホンマにもったいない。
暁さんは高身長で女性としてはガッチリな体格が魅力で、私は特に「長い太もも」が大好きなんです。男役は総じて踵の高い靴で身長をカサ増ししているけれど靴で演出出来るのは膝下の長さだけ。暁さんは正真正銘の脚長高身長だから太ももが長いんですよね。私なんかもう、暁さんの太ももにおさまっている大腿骨まで「さぞ長くて美しいんだろう」と想像しちゃいます。
ですが光芒の暁さんはロング大腿骨の魅力を披露する機会がほとんどなかった。貧しい時の衣装はみずぼらしいし、紳士な時の衣装はすっぽりマントでしたから。1幕でも2幕でも客席降りしてくれましたがどちらでもマント姿だったんですよね。体型にフィットしたキラキラ衣装の方が嬉しかったなぁ。
一方で月城さんは実は、プロポーションはとりたてて良いわけではなかったりします。なのでマントで首から下を覆って客席の視線を「超絶美しい顔」に集中させる作戦は大大大成功かと。

同じ時代背景でも「座付き演出家だけが作ったエタボ」と「文豪の名作が原作な光芒」の違いは大きかった。私は月城さんと海乃美月さんに光芒をやってもらいたかったな、あの演出のままでは大劇場公演はキツいけど全ツなど外箱ならオッケーだし。主人公もヒロインも陰や不幸を背負っていてホンマにピッタリなんですよ、月城さん海乃さんに。

さて、他のキャストについても言いたい放題してみましょうか。
ヒロインの瑠璃花夏さん（103期）にはとびっきりの美貌と若さがあり、歌唱力演技力など実力面でも申し分ないです。
だけど華がない。演じるエステラが不幸キャラである事も影響しているかもしれませんが多分根っこはそこじゃなく、劇団内で路線として育てられこなかった事が影響しているように私は思っています。
今回のエステラにしたって一応ヒロインではありますが実は冷遇されているんですよね、マジでウマミがない。屈折したキャラだし1幕はほとんど出番がないんですよ。2幕ではそこそこ出番があったものの心理描写を削られすぎていました。最終的には屈折とサヨナラして暁さんの愛を受け入れるんですが過程を端折りすぎているので瑠璃さんの熱演をもってしても埋め合わせる事は出来なかった、どうにも唐突な感じで。そもそもエステラは若い子向けの役じゃないしね。まず間違いなく彼女はトップ娘候補ではないんでしょう。
娘役は短期間勝負ですし与えられた環境の影響が大きいんですね。本来ならビジュアルも実力も瑠璃さんよりだいぶ不利（だと私は思う）天紫珠李さん（101期）はエタボで随分と華やかに見えましたよ。これも最高の環境を与えられ続けた末に月組のトップ娘になる事が決まったではないでしょうか。

2番手の天飛華音さん（102期）は相当に期待されている路線中の路線なんでしょうね、ずーっと役付きが良いですもん。光芒でもわざわざ天飛さんを「正真正銘の2番手」アピールすべく大作な名作を捻じ曲げてまで天飛さんの出番を増やしていましたし。
十分に実力があるので劇団のゴリ押しっぽさをさして感じさせないところが凄いです。
なのに、どうしてでしょう華がない。なんかこう「突出したもの」がないんですよね私にとっては。真ん中の人というよりは別格の雰囲気を感じます。

3番手の稀惺かずとさん（105期）には驚きました。ライブ配信で観た「1789」新人公演主演のご様子ですっかり興味関心を失っていたのですが光芒では随分と歌ウマになっていたんです。というかもともとそれなりに歌唱力があったんでしょうね、1789のセットリストはあまりに低音で難曲過ぎたのかと。光芒での歌唱はすべてキーが高く男役としてはギリギリではありましたが音程のブレがほとんどありませんでした。
全体的に陰鬱キャラが多い光芒の中で稀惺さんだけは最初から最後まで「明るく爽やかな良い人」。美味しい役だし稀惺さんの持ち前のキャラにハマっていたと思います。
だけど、、、私の中では稀惺さんにも華やかさを感じません。というか実は、稀惺さんには別格の雰囲気も感じないんです。真ん中の人でもなく脇を固める人でもなくいわゆるアンサンブルっぽさを感じます。
ホンマに私の感覚なのですが稀惺さんをゴリゴリアゲアゲにはしない方が良さそう。ゴリアゲで1789新公主演させた結果がアレだったんですしね。ここでゴリアゲを続けるようなら「やっぱ宝塚は変わらない」って事。ま、きっとそうなるでしょう、親が有名人なジェンヌさんは珍しくないけれど稀惺さんは超特別ですから。

この度「BIG FISH・光芒・ミュサロ」と3分割された星組。
そりゃあBFと光芒だとBFの方が人気でしょう。配信も円盤化もない事が拍車をかけてしまいましたが、こういった事情がなくてもBFに軍配が上がっていたはずです。なんせトップスターと、実力はさておき宝塚らしい華やかさをそのまんま体現した極美慎さん（100期）が出演するんですもん。ヒロインは小桜ほのかさん（99期）ですが実際は詩ちづるさん（105期）に注目が集まるんでしょうね。私も生観劇したかったです、光芒の瑠璃さんよりBFの詩さんの方が出番が多く美味しい役な気がするから自分の目で確かめたかった。
次の星組の大劇場公演が楽しみです。どうかチケットに当選しますように！