「夜明けの光芒」感想 名作を宝塚化する功罪

その他の宝塚

うぉー、「モンテ・クリスト伯」アゲインかぁ?原作はもっと面白いんやろな・・・

星組「夜明けの光芒」を観ました。原作は文学に無縁な私でも名前を聞いた事のあるディケンズ「大いなる遺産」だそうで。

原作があるだけにトンチキぶりは少なかったです。
だけど原作を読んでいなくても「原作を台無しにしているんだろう」な推測をさせまくるお芝居で、2022年に梅芸で観たモンクリを思い出しました。そういえばこれも星組でした。
どう台無しにしたかってそれはどちらも
「大作で名作な原作への敬意よりも宝塚化を重視しすぎてしまった」
って事。
モンクリはあまりにも原作を端折りすぎていました(感想記事はこちら)。長いストーリーなのに2本立てのお芝居にしちゃったんですからね。
夜明けの光芒は1本物ではありましたが
・天飛華音さんを完全な2番手にするため無理矢理すぎる設定を採用する
・物語の根幹を端折る
事によってわかりにくく底浅いストーリーになってしまったと私は思います。

でもね!
モンクリにしても夜明けの光芒にしても、
宝塚化されたからこそ、
私のような文学に無縁な人間でも観劇後に「原作のあらすじくらいは調べようか」と思わせたわけで。

そうゆう意味でホンマ、大作なり名作なりを宝塚化する事には功罪どちらもあると思っています。

「功」に感謝しつつ「罪」に突っ込んでみましょうか。
以降ネタバレがありますのでお気をつけください。

最も深い罪は「天飛さんの2役」に尽きます。
公式サイトには原作にも存在するベントリー・ドラムルとしてキャスティングされていますが、実際は暁千星さん演じる主人公ピップのダークな心の声も演じているんですね。ピップのドロドロした「負の感情」が別人格となり、天飛さんとして出てくるんですよ。
原作にはない「負の感情」の存在そのものがアカンってわけじゃない。
ピップと「負の感情」の言い争いは斬新で良い演出かもしれない。
だけど!
実在していない「負の感情」と
実在する「典型的なつまらない男」ベントリーを
同一人物に演じさせたのは致命的でした。
ダメダメすぎるほどにダメ。ここは絶対に違う人が演じなければならなかった。

なぜこんな演出になってしまったのか?
それはひとえに
・天飛さんを徹底的に、明らかな2番手にしなくてはいけない
・稀惺かずとさんを明らかな3番手にしなくてはいけない
という宝塚ルールを遵守するためなんですね。

原作やわかりやすさを重視するなら2番手はハーバートかコンペイソンにしなくちゃいけなかった。
ハーバートは「典型的な善人」でコンペイソンは「典型的な悪人」です。天飛さんならどちらも請け負えたはずですが実際はハーバートを稀惺かずとさん(105期)、コンペイソンを夕渚りょうさん(98期)が演じています。
これがまた、いかにも宝塚的なんですよね。
宝塚にふさわしいキャラのハーバートを路線に演じさせ、あまりに悪役すぎるコンペイソンは存在感を薄めすぎるほどに薄めて(おそらく)路線ではない方に演じさせた。本当なら重要度は「ハーバート<コンペイソン」なのにね、物語の諸悪の根源ですから。

コンペイソンは・・・
ミス・ハヴィジャム(七星美妃さん-99期)を結婚詐欺で、
エイベル・マグウィッチ(輝咲玲央さん-92期)を悪の道に引きずり込んで、
不幸のドン底に突き落とします。
それゆえミス・ハヴィジャムは狂い、エイベルは囚人になるんです。そしてエイベルの娘エステラ(ヒロイン・瑠璃花夏さん-103期)をミス・ハヴィジャムが養女にします。
お芝居はこのあたりについては駆け足であれ説明してくれました。
が、何故コンペイソンがミス・ハヴィジャムを結婚詐欺のターゲットにしたかをお芝居ではまるっと端折っちゃったんですね。
原作のあらすじによるとミス・ハヴィジャムには異母弟アーサーがいたのに父親の財産を一切相続出来なかったんですよ。それで復讐心をたぎらせたアーサーは歌舞伎でいう「色悪」として名を馳せていたコンペイソンに「俺のねーちゃんめっちゃ金持ちやねんで、結婚をチラつかせてカネを奪ってみーへん?山分けしようやー」と持ちかけるわけです。

ストーリー重視ならアーサーは欠かせないし、コンペイソンは2番手がやっても良いくらいの存在でした。
それが宝塚ナイズによって
アーサーは消え、
コンペイソンはグダグダになり、
いなくても良い「負の感情」が登場して端役のはずのベントリーと融合し2番手キャラになった、
わけで。
だけど、宝塚化されなければ私が大いなる遺産のあらすじを調べる事もなかったわけで。

というわけで功罪どちらも感じた「夜明けの光芒」でした。
私は願っていますよ、「宝塚の興亡」が話題にならない事を。

以下はオマケ。

改札を通るにあたり、スマホからピンク色の画面を出してスタッフさんに見せている方がとても多かったんですがあれがイープラスのスマチケなんですね。私は宝塚友の会の会員証で入場しました。

開演よりだいぶ早めにシアター・ドラマシティに到着して記念撮影したのですが、

なんやこれ?

なんと開演が10分遅くなる案内でした。
こうゆうのを見ると「やっぱ時間ギリギリの行動はしんどいな」って思います。たった10分ではあれタイトなスケジュールで新幹線などの予約を取っている方にはハラハラだった事でしょう。
私は東京宝塚劇場で18時開演の宙組公演を観る予定なのですが、ショーのみで早くに終演するとはいえ新幹線での帰阪は見合わせる方が良さそう。もともとそう考えていたし、この案内を見てさらにそう思いました。

6月6日 追記
キャスト感想も記事にしました。

コメント

  1. かなえ より:

    観劇記ありがとうございます。
    実際に忖度なくご覧になった方の感想は貴重だなとたー様のブログを読むといつも思います。
    先日日比谷のキャトルに行った時も、暁さんが表紙なんだ〜時も販売のプログラムを見かけたのですが興味がなかったのです。
    週末に配信があるようなので、見てみようかと思いました。
    キャトルのあるフロアに阪神タイガースのグッズ売り場がオープンしていました。

    ジャニーズの伊野尾慧さん主演の「ハネムーン・イン・ベガス」の公演、元宝塚トップスターという
    霧矢大夢さんが主演の方たちと写真をインスタにあげておられました。
    舞台化粧をして白い衣装の伊野尾さん、見た目が
    ありちゃんに似てる!!と思いました。
    ジャニーズで売れている方が主演だとチケットさばけるからいいですよね。主催者側は。

    宙組の全国ツアー、神奈川県と福岡県は劇団寄りの主催ですが、他はどこなんだろうと気になりました。
    SNSを見ると会場を貸す側が恥知らずとか、
    ドサ回りとかすごい口調の話題もあり、少し引いてしまいました。いろんな考え方の人が好きな発言できるのは平和な証と思うことにします。
    わたしの予想ですが、瀬央さんを同行させて現行への非難の風よけにするのではと思ってます。
    あと宙組は人数が少ないので、コンサートとかディナーショーなどの3分割はないと予想です。
    109期生は昨年9月末以来の初舞台なんですよね。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      かなえさん、夜明けの光芒は地味ですよね。プログラムはやっぱ表紙の華やかさが大切だと私は思います。私も買っていません、ただし表紙の問題ではなく「プログラムを買うのは原則として大劇場公演のみ」と決めているからです。
      配信を観る予定なんですね、良ければ感想をお聞かせください。

      あら!キャトルのフロアにタイガースグッズの売り場ですか?ふふ、チグハグでしょうね、宝塚もタイガースもHHホー傘下ではありますが。

      ハネムーン・イン・ベガスはお気に入り劇場なSkyシアターでしたし観たかった、霧矢大夢さんも気になりますし私は上口耕平さんがすごーく好きだし。主演の男の子は「知らんわー」でしたがあの事務所の子なんですね。へー、暁さんに似ているんですね、愛くるしい感じかな?
      はい、結局チケットを捌く能力で主演なりヒロインなりプリンシパルが決まるんでしょう。実力面では案外アンサンブルの方が良かったりしますしね。

      宙組全ツ、ひどいですよねー(涙)なんで関西でやらないねん!!!
      でね、私、この週末にも夫に「お願いアゲイン」してみようかと。はい、SNSをやらない私でも複数のブログで随分な発言を目にしました。なので私は出来ればエスカリエに続き全ツも生観劇したいです。
      はい、誰かしら専科の人を連れて行くかもしれません。だけど私は思うんです、風よけナシでも観たい人だけが観たら良いと。

      そう、宙組の109期生は活動出来ないまますごしています。新人公演期間中の宙組の生徒は直ちに組み替えしておいたら良かったのに。今からでもそうして欲しいし、もしそうしても私は宙組公演を観に行きたいです。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  2. かずこ より:

    たー様こんばんは。
    ありちゃんのドラマシティ公演が当選するなんて、ラッキーでしたね。
    無事観劇出来て良かったです。
    私は配信もご縁がなくて残念。星組移動してからの暁さんは顔もシュっとしてカッコ良くなったと思います。

    私のほうは、シアターオーブ公演を無事観劇出来ました。
    円盤がでない以上、逃すと残念すぎるので今はほっとしています。
    昨年も死神の公演で行きましたが、オーブは都会のお洒落な劇場ですね。
    ちょうど私の観劇日に作曲家のリッパ氏が観劇されていて、礼さんが紹介してました。
    リッパさんの音楽は綺麗なメロディで、良かったです。

    作品は、決して宝塚向きとはいえないファンタジーものですが、別箱ならアリですかね。
    礼さんの老年姿は決してカッコ良くないのです。
    が、臨終の際の歌は味わいがあり感動しました。最後泣いてるひとも多く、私もうるっときました。
    ポスターの礼さんは大変爽やかでしたが、1幕ラストはあの姿で詩さん演じるヒロインにプロポーズしてました。RRRやエタボよりずーっと宝塚らしいロマンチックな場面でしたね。
    今回はたまたま観れてラッキーでしたが、版権厳しい作品は選ばないでほしいです。

    たー様は来月遠征されるのですね。
    私は宙組さんに思い入れもないけど観たくないほどの感情もないです。観れたら観ます。
    まずは大劇場公演、無事に観劇出来ますように。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      かずこさん、おはようございます。
      はい、暁さんドラマシティ公演に当選してとてもラッキーでした、ヒトケタ列だったので肉眼でもいろいろ見えましたし。
      ええっと、暁さんのお顔は今も丸っとしているように感じたかも?骨格なのかも。

      かずこさんは大魚だったんですね、はい、貴重な公演ですから絶対に見逃したくないと思いますよね。プレッシャーにはメリットもデメリットもあります、デメリットを乗り越えて観劇を果たした今のかずこさんはメリット(達成感)でいっぱいでしょう。
      オーブは確かに「都会のお洒落な劇場」です。ただ私は40あたりから閉所も高所も苦手気味になってしまい、エレベーターでぎゅうぎゅうになって高所に登るのはちょっと怖いんです。そんな私にとって大劇場は非常に居心地が良かったりします。

      リッパ氏の観劇は宝塚公式サイトのニュースにもなっていましたね。キレイなメロディだったんですかー、良いなー、やっぱミュージカルって音楽が大切。死神の音楽は複雑で憶えにくく、ファントムと同じモーリー・イェストンとは思えないほどでした。

      あら、宝塚はファンタジーと相性が良いと思っていましたが大魚は宝塚向きとはいえないファンタジーものだったんですね。
      礼さんの老年姿ですかー、エリザベートのフランツみたいな?そういえばフランツも歌唱力命なキャラですね。

      素敵な作品もそう、版権が厳しいのは悲しいです。
      映像化出来ないって事は再演するにも手続きやお金がややこしそうだし。

      はい、私はまず大劇場で、続いて東京でも宙組公演を観ます。
      去年の博多座に比べると短期集中で遠征計画を立てなくちゃいけません、東京へは交通手段が多いので余計に悩みます。

      そう・・・まずは大劇場です。
      そう・・・・・・「無事に」観劇出来るよう私も祈っています。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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