七月大歌舞伎での香川照之&歌舞伎座初体験 感想

歌舞伎・芸舞妓

七月大歌舞伎(昼の部)

前置きが長いので香川照之(市川中車)さんについての感想をまず読みたい方はこちらにどうぞ。

歌舞伎座へのアクセスなど

いや~、助かりました。
さいたま市の某駅からJR有楽町駅で降りて歩いて歌舞伎座に向かうつもりでしたが、読者さんからメトロの日比谷線の利用を勧められたので

上野で降りて、

中央改札に向かい、

日比谷線に乗りました。むちゃくちゃ便利でした~!
本来なら帝国劇場も日比谷線を利用すると日比谷駅で降りて真上だったんですよねぇ。知らなかった私は帝劇観劇デビュー(感想記事はこちら)の帰り、大雨だったのに歩いて有楽町駅に向かってしまいましたよ。読者さんから教わらなければ今後もずっと有楽町駅を利用していたでしょうから本当に勉強になりました、ありがとうございました。

歌舞伎座へは東銀座で降りて、

3番出口をくぐればすぐそこ!

いやー、ホンマに便利でした。
しばらく探索した後エスカレーターで地上にあがると、

デデーン!
をを~、と思いつつ(南座や宝塚大劇場のそばにはある)川がないのが寂しかったりしましたが、人だかりがあったので近づいてみると、

一幕見席(ひとまくみせき)のチケットを買うための行列でした。
10時からの販売で、夜の部も販売するとの事だったので

あくまで昼の部で香川照之(市川中車、いちかわちゅうしゃ)さんを拝む事がメインでありながらも、團十郎さんも拝みたくなりチケットを購入。

10時20分ごろに開場したので歌舞伎座の中に入ると、

鏑木清方(かぶらぎ きよかた)の「さじき」

複数の日本画が飾ってあり感動しました。スタッフさんに確認し撮影しましたが、額のガラスに照明が反射してしまいまともに映ったのはこの1枚だけでした。素晴らしい日本画を無料で拝めるなんて太っ腹ですねぇ、歌舞伎座は。ただし一幕見席だと一般客席には立ち入れません。

もちろんイヤホンガイドは借りました(800円)が、南座や大阪松竹座のそれより進化していました。
ちょっと悔しくなりつつ着席すると、

安価な席でも私にとっては十分でした。もちろん双眼鏡を使う前提ですけどね。
香川さんが宙吊りになるワイヤーが取り付けてありました。

香川照之(市川中車)の様子

さて、前置きが長くなりましたが感想です。

昼の部の「菊宴月白浪(きくのえんつきのしらなみ)」は一応、3大歌舞伎のひとつ「仮名手本忠臣蔵」のスピンオフではありますがアレンジされまくっており、登場人物のキャラが変わり果てています。
重要人物は
・絶対的存在のトップスター
・2番手(肩書上かも)
・3番手(事実上2番手かも)
の3人。
本来ならトップスターは某歌舞伎役者が演じ、香川さんは2番手を演じるはずでした。
これがねぇ・・・
トップスターと2番手は生き別れた双子という設定で、しかも2番手が兄で、生まれてすぐに養子に出されているんですね。某歌舞伎役者と香川さんはいとこで、香川さんが年上。そして周知のとおり香川さんは歌舞伎界の御曹司として生まれておきながら一般家庭で育っています。もうホンマ、宝塚のあてがきのごとく香川さんのためにあるような作品なんですよ。こんなの、香川さんために意図的に選ばれた作品に決まってます。
2番手なら役の量もちょうど良かった。2番手ではあれ肩書上と言っても良いかもな立場で、見せ場はあるもののあくまでトップスターの引き立て役。実際そんな雰囲気の中で絶命します。
歌舞伎役者としては大きく出遅れた香川さんにとってピッタリな役だったかと。

しかし、皆さんご存じの通り絶対的トップスターが再起不能となり急遽、香川さんがトップスターになりました。

はっきり言いましょう、やっぱり無理があったかと。
まずビジュアルがイマイチです。アラカンという年齢だけでなく、メイクの技術不足と思われます。
あの大学を出ているだけに大量のセリフにはよどみがなく、テレビドラマで大活躍しただけに滑舌はバッチリでした。だけど声に張りがない。聞き取れるけれど「歌舞伎俳優らしさ」がありません。
そして所作にはキレに問題があったかと。ダンスって「動く時は動き、止まる時は止まる」が「キレの良さ」だと私は思っていまして、歌舞伎の所作にも似たものがあると考えています。で、香川さんは動きが鈍く、止まる時に止まれないと私は、思いました。
当然かもしれません、テレビドラマでは実在の人物のように自然に演じる事が重要。しかし歌舞伎では所作のひとつひとつ、発言のすべてがわざとらしいのが重要なのですから。

観客席はご祝儀ムードが凄まじく、特に宙吊りではワァワァと賑やかになりました。
でもこれ・・・香川さんが両手両足を大きく広げて凧の形をした乗り物に乗り、客席上をどんぶらこっこと移動するだけなんですね。サーカスのような難易度がある宙吊りではありません。ただ、末席でもけっこうそばまで香川さんを拝む事が出来るのは嬉しかったです。近くで拝むとあらためてお顔のシワの深さやメイクの粗さに気付きました。

どうにも香川さんに粗削りさを感じまくってしまったのは周囲の歌舞伎役者達、とりわけ、3番手の影響が大きいです。2番手は2幕で絶命しますが3番手は最後まで残りますしトップスターとの一騎打ちもあり、事実上の2番手と言っても良いように私は思います。
この3番手がなんかもう、登場するなりキラッキラの若いイケメンなんですよ。イヤホンガイドが「中村歌之助」と紹介するから「え?それって三田寛子の息子で橋之助の弟の?」と思いましたが幕間で確認するとその通りでした。
歌之助さんは1幕では善人ですが2幕途中、大きなきっかけを経て欲深い悪役となり恩人を手にかけます。そして3幕では修繕中のお寺(確かイヤホンガイドは「浅草寺」と言っていたような)の屋根の上でトップスターと一騎打ちです。
若く美しく整った顔、軽やかな動き、止まる時のビシッ!と感、見得を切る時のすんごい寄り目・・・いずれも香川さんにはないものでした。
本来ならこの一騎打ちは「御曹司育ちのスーパートップスターVS.将来スーパートップスターになりうる御曹司」になるはずだったんですね。しかしながら諸事情あり「抜群の血筋でありながら御曹司になれなかった歌舞伎役者、いわば幻の御曹司VS.正真正銘の御曹司」となったわけです。

観劇後、外に出るとビックリするほど報道陣がたむろっていました。
すでにいろんなニュースが出ているようですが、機会ある方には是非、実際に観劇していただきたいです。一幕見席で「菊宴月白浪 大詰」だけにすれば1,400円で、ストーリーは追えないもののショーとして香川さんの宙吊りや歌之助さんとの一騎打ちを楽しめます。

私は当初、昼の部だけ観劇した後いわゆる銀ブラをしてJR有楽町駅から単身赴任中の夫のアパートに戻るつもりでしたが、急遽一幕見席で團十郎さんを拝む事にしたので

歌舞伎座内の喫茶「檜」でカレーをいただき腹ごしらえしました。
基本的に1日の出来事はひとつの記事にするんですが今日は夫の単身赴任先から関西の自宅に戻りますし次回、一幕見席や團十郎さんについて記事にしますね。

2023年7月5日
一幕見席の様子や「め組の喧嘩」について記事にしました。

コメント

  1. かなえ より:

    スレチなのですが、大阪府民対象で「半額鑑賞会」というイベントがあり、応募の締切が今週末のようです。
    ご存知でしたらすみません。
    取り急ぎコメントしました。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      かなえさーん、調べてみたらありましたありました!「府政だより No.464」に、案内が!
      南座での「新・水滸伝」もあるんですね。これって8月に歌舞伎座でやって9月に南座なんですよぉ~、なんかお下がりみたいに思っちゃうぅぅぅ、しかも歌舞伎座の方がキャストが豪華だし!
      歌舞伎座に実際に行ったのでハッキリ言いますが、背後に超高層ビルがある歌舞伎座よりも隣に雄大な鴨川がある南座の方が風情があります。もっとも、3階席の階段は歌舞伎座の方が傾斜がマイルドで良いんですけどね・・・

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  2. こんちゃん より:

    関西の、たー様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    一連の報道で、週刊誌やスポーツ誌の記者が書いた記事をたくさん目にしました。

    記者たちは、本来ならトップスター役のはずだった某歌舞伎役者さんの芸事の点について、過去のTV出演作は見ているのでしょうが、過去の歌舞伎作品の出演作をDVDででも探して見ていないでしょ、と思うことがあります。

    SNSを探しても、歌舞伎ファンは高齢者が多いゆえか、歌舞伎役者の芸の感想ってあまり語られておらず、「人間国宝の志向の芸を堪能した」「若手の成長を感じた」みたいな感想が多くて、かつての本来ならトップスター役のはずだった某歌舞伎役者さんの芸を語る言葉は「とにかく上手かった」「すごかった」

    なので、たー様の率直なご意見を拝読できてうれしいです。

    香川照之(市川中車)さんの歌舞伎でのお芝居は、配信だったか、こんぴら歌舞伎の舞台録画放送だったかで「あんまと泥棒」というものを見たことがあります。

    おんぼろ長屋で暮らす盲目のあんま(中車)のところに泥棒が入ってきて鉢合わせするが、

    あんまが語る自身の悲惨すぎる身の上話に泥棒は涙し、よそで盗んだ金品をあんまに恵んで去っていく。

    (実はあんまはドケチのゼニの虫で、蓄えはたっぷりありました。ちゃんちゃん♪)

    みたいなおっさん二人のセリフ劇で、あんまの目は見えないが聴覚の鋭さで泥棒の動きの方向を察するところとか、こういうのはさすが香川照之さん、上手いなあ、と思いました。

    まあ、40過ぎて歌舞伎界に入った方には、TVのリアル演技経験を生かせる系のお芝居の役を振るほうが良いと思うのですが、こんなに急に香川照之(市川中車)さんが座頭を預かるような形になると、一門と團子がガチ歌舞伎を継承するために、お客様方にはあと10年ほど暖かな目で座頭をお見守りいただき・・・なのですね。

    本来ならトップスター役のはずだった某歌舞伎役者さんの演技は配信でいくつか拝見したのみですが、宝塚で言うと超強い娘2とか達者な別格姉御役をやっているのが生き生きしていらっしゃいました。

    三谷幸喜さんの新作歌舞伎でエカテリーナ女帝を演じていました。某ロシアの指導者を女にしたような、とにかく切れ者で、政治の世界で残酷な決断の駆け引きに慣れた女帝役がハマっていました。

    こんなことになって、彼の映像での出演作の配信も停止となり、TVで過去の歌舞伎出演作の放送も当分あるのかどうか・・・本人はもうこんな事情ですが、共演していた方たちが舞台の上で生きた証が、もう新たなファンと出会う機会を得られないのが悔しいです。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      こんちゃんさん、こちらこそいつもありがとうございます。
      皮肉にもあの事件後、歌舞伎界がプチバブルっているかもしれません。香川歌舞伎は最安席が全日完売していました。

      報道も過熱気味ですね。
      それゆえ歌舞伎についてさして詳しくない記者も駆り出されているのかもしれません。
      これねぇ、悩むところです。歌舞伎への思い入れが強い人の評価だとそれはそれでその人の好みで大きく偏っている可能性がありますから。
      所詮は芸能ゴシップ記事ですし軽く読めば良いと私は思っています。

      そうですね、一般人による歌舞伎観劇の感想にはなかなか触れる事が出来ないですね。かといって四季なら多いかと言われるとそうでもなく、宝塚の感想記事だけ飛び抜けてあふれているのかも。
      とりあえず「凄かった」と言っておけば無難です。こんちゃんさんが記事にしたとおり「多くの他人が凄いと言うのだから自分も(本当はそう思っていないけれど)凄いと言う」なところもあるのでしょう。

      あとひょっとすると、歌舞伎を観る方々には真面目にストーリーを追っていない人が多いのかも?雰囲気だけでも楽しめますからね。
      この度の香川歌舞伎のストーリーはまともに追うと(少なくとも私にとっては)許しがたい描写もあるから深追いせず、宙吊りの香川さんをベタ褒めするくらいで丁度良いかもしれません。
      2幕のラストで香川さんの妻も宙吊りになっているんですよね。ただしとっくに死んでいるのでいわば亡霊です。この妻の死んでからの様子がとにかく気色悪くって・・・南北ワールドなグロ&イミフなんですよ。だけどそれゆえ、あまりに大団円な「め組の喧嘩」よりおかわりしたくなります。

      こんちゃんさんは香川さん主演の歌舞伎を配信(あるいは放送)で観たんですね。
      あんまの役でしたら華やかさは不要だと思いますし、香川さんの喋りの達者さが活きるのかも。
      はい、歌舞伎にもいろんな役がありますから香川さんにも向いている役はあるはずなんです。だけどトップスター(しかもトップオブトップ)はキツいかと。

      そう・・・今のままだと10年間は香川親子への忖度が必要でしょう。
      あまりに、あまりに某歌舞伎役者に依存しすぎたカンパニーだったわけです。今さらですが有力な2番手になってくれていただろう初代市川右近(現在は三代目市川右團次)さんが出ていくのを引き止めていたら良かったのかも。

      私が某歌舞伎役者さんを観たのは無料配信されていたスーパー歌舞伎「オグリ」だけです。超イケメンの役で正直、ビジュアルはフィットしていなかったかな。なにぶん小柄でちょいポチャですから。こんちゃんさんは某歌舞伎役者さんの「超強い娘2」や「達者な別格姉御役」を配信で観たんですね。本来なら女形の方が向いていたかもしれません。
      それで三谷さんは某歌舞伎役者さんに超イケメンではなくエカテリーナ女帝を演じさせたのかな?
      はい、某歌舞伎役者さんはテレビドラマで頭の回転が速い役ばかり演じていた気がしますし歌舞伎でもその傾向があったのかも。歌舞伎に特化しなければ、芸の幅は香川さんが上でしょう。

      今後の配信などはどうなるんでしょうね。
      今後舞台に立つ事はなくてもこれまでの映像は放送なり配信なりして良いと私は思っています。そう、共演していた方々まで被害を被るのはおかしいですしね。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  3. しん。 より:

    ブログ読ませて戴きありがとうございました。
    なんか一つ謎が解けたというか。
    テレビで映像を見て、中車さんえらい皺が深いなと。舞台上の顔がかっこよくない。皺々で口角下がりっぱなし。
    元々の素顔が皺が深いのかな?と、年配の歌舞伎役者さんの素顔を見ると何故か結構艶々でそんなに皺っぽくない。
    何故?
    ブログを読ませて頂いて、化粧のスキルが低いんだと判明。
    へ〜。
    所作や発声は小さい頃からやってる役者さんと比べたら見劣りするのは当たり前ですが、何とか頑張って欲しいです。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      しん。さん、はじめまして(ですよね?)
      こちらこそ、私の記事を読んでくださりありがとうございました。

      中車さんのお顔は(双眼鏡越しですが)生で拝んでも本当にシワッシワでした。
      元々のお顔というのもあるのでしょうが、経験豊富な歌舞伎役者達はスッピン風でもいろんな工夫をしていると私は思っています。
      中車さんは父親がそういったテクニックのプロプロだったのに継承出来なかったのですから残念ですね。
      顔がシワシワだっただけでなく、アイラインや広角の黒いラインも雑だったように思います。

      はい、ドラマでは顔芸がキマりまくる方だったのに歌舞伎ではこのあたりもイマイチでした。せめて宙乗りの時くらいにこやかにしてくれたら良かったのに苦虫を噛み潰したようでしたしね。
      中車さんからすると相当のプレッシャーだったのでしょう。テレビカメラには慣れていても観客の目にはまだ慣れていないのかも?

      だけど観客はとても優しかったのですよ、初日という事もあるのでしょうがすんごい盛り上がりでした。中車さんを応援したい人がたくさんいるんですね。
      しん。さんも応援モードのようですし、機会があれば生の中車さんに会いに行ってみると良いかも。今は七月大歌舞伎、その次は歌舞伎座の八月納涼歌舞伎、その次は南座の九月花形歌舞伎です。私は今後も出来る範囲で中車さんを追いたいです。

      この度はコメントをありがとうございました。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  4. かずこ より:

    たー様こんばんは。

    コメントしたいなぁと思いつつ、パソコンに向かう余裕がなくて今頃ですみません。
    まずは歌舞伎座デビューおめでとうございます。しかも初日!
    ちょうど私も初日観劇してたのですよ。まさかの観劇かぶりですね。

    なかなか刺激のあるスペクタクル歌舞伎で、私は後日幕見席でリピートしましたよ。
    澤瀉屋さん主演公演を3ヶ月連続で観劇してまして、壱太郎さんヒロインを毎月観ている感じです。ヒロイン役者ですよね、ファンになりそう。

    にざたまで歌舞伎デビューした私ですが、演目次第でうっかり睡魔に襲われることがあるんです。今回の南北さんの作品と澤瀉屋さんのケレン味ある演出、内容はビックリしますが面白いですね。
    外国人観光客の方々も沢山観劇していて、花火の映像やアクロバティックな技もありショー感覚で楽しまれたかと思います。

    たー様は幕見席デビューもされたのですね。あれは良いシステムですね。
    ご観劇されため組は確か2時間近くあるので、私だとしんどいかなぁ。澤瀉屋さんの後だとなおさら。團十郎さん親子の舞台は未見なので3幕目はみてみたいです。昨年末ぼたんちゃんの舞台は歌舞伎座で拝見してて、めちゃ美少女でした。

    中車さんは確かにビジュアル老けているし素人の私でも歌舞伎キャリアが足りないとは思いました。でも共演者はベテラン揃いで支えてましたね。歌之介さんもカッコ良かったです。

    たー様は松竹座でにざ様も拝見したのですね。私も桜姫でおみ脚拝見しましたが、ほんとスタイル良いですよね。私も若いときのにざたま観たかったです。でもご高齢でもオーラあふれるお姿観れたのは良かったです。

    私も宝塚ファンでありながら、歌舞伎もじわじわ好きになってます。
    幕見席の復活はありがたいので、たー様も埼玉にいらした時にまた来てくださいね。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      かずこさん、お忙しい中コメントをありがとうございます。過去記事へのコメント大歓迎です。
      かずこさんも3日昼の部に歌舞伎座にいらしたんですね!観劇かぶり、嬉しいです。

      はい、仮名手本忠臣蔵の登場人物を活用しておきながら随分とスペクタクルっていました。
      「菊宴月白浪(きくのえんつきのしらなみ)」の歴史をざっくりまとめると、

      1748年に仮名手本忠臣蔵が初演された

      中村仲蔵(1736-1790)が仮名手本忠臣蔵の斧定九郎をブラッシュアップしてあのビジュアルした

      鶴屋南北(1755-1829)があのビジュアルの定九郎を仮名手本忠臣蔵とは全く異なるキャラにした菊宴月白浪を作って1821年に初演

      1984年に猿翁さん(1939-)が163年ぶりに復活させた

      1991年に猿翁さんが宙吊りを採用

      2023年に猿翁さんの息子である香川照之さん(1965-)が主演、宙吊りに

      らしいです。
      予習なしで観劇したのですが観劇後に復習したくなるストーリーでした。長い年月と複数の天才によって出来上がった作品なんですね。
      現在の上演が叶っているのは猿翁さんの功績で、この度は数奇な(?)経緯で猿翁さんの息子である香川さんが主演したんですね。

      かずこさんは後日一幕見席でリピートしたんですか~、いいなぁ、私もおかわりしたかった。かずこさんがリピートしたのはどの幕です?それとも3つともですか?

      はい、壱太郎さんは本当にラブリーです。ちょっと鼻がドテッとしていますがそれゆえ若い娘っぽさを感じるのかもしれません。そう、ヒロインっぽさがあるんです。
      しかも壱太郎さんは立役も立派ですよ、花形歌舞伎の仮名手本忠臣蔵では早野勘平を演じていてキマっていました。ほんまもんの実力派です。ただお父さんの鴈治郎さんがあの体型なので肥満には気をつけて欲しい~

      あら!にざたま作品でも内容によっては眠くなるんですね。どんな作品でしょう?
      私はにざたま作品だと「東姫桜文章」と「かさね」のイメージしかなく(どちらも生観劇しておらずウィキや映像です)、どちらも南北だから気色悪くて眠くなるどころか寒気がしました。
      そう、南北は「内容はビックリしますが面白い」なんですよね。気色悪い・・・けどおもしろいというか。
      今回の菊宴月白波では「特効薬を作るために辰の月に生まれた人の生き血が必要」ってだけで十分に気色悪いのに、すでに死んでいる(のに生きているかのように美しいままな)人の血を使うんですよね。生き血じゃないやん!しかも歌之助さんが殺した、香川さんの妻の血だし!さらにこの妻が幽霊になって香川さんに「私の血を使いなさい」と伝えに来る・・・もう、どこまで気色悪いねん!!!でもってこの生き(?)血を使った薬で若様が元気いっぱいに回復するし・・・

      気色悪さは海外の方には伝わりにくいかもしれませんが、ショーとしての要素も大きかったですよね。
      花火、死んだ妻の宙吊り(私の席からはほぼ見切れていましたが)、香川さんの宙吊り(これはよく見えた)&歌之助さんとの一騎打ち。このあたりは海外の方にも向いているかと。

      そうなんです、歌舞伎座観劇デビューで欲張って一幕見席までデビューしました、歌舞伎座に着いてからの偶然とご縁あっての一幕見席でした。はい、2時間ありましたが私は大丈夫でしたよ。隣の方のすね毛攻撃には参りましたけどw
      本当は3幕目も観たかったのですが、一幕見席チケットのために並んでいる間に夫に「追加で観劇して良い?帰りが遅くなるけど」とラインしたら「いいよ、晩ごはん待ってます」と返事が来たので、2幕のめ組だけでなくさらに3幕も観たいとはライン出来ませんでした。ムーラン・ルージュの時はだいぶ前もって観劇が終わるのが21時過ぎると伝えていたけれど、当日連絡で同じくらい遅くなるのは申し訳なくって。
      いつかぼたんちゃんを拝みたいです。両親がイケメン&美女なんですからぼたんちゃんも美形でしょうね。

      香川さんのビジュアル・・・にざ様に教わってどうにかならないもんでしょうかね?にざ様の俊寛でのお顔はシワがなくて異常レベルに若々しく、どんな工夫をすればああなるのか不思議でなりません。
      本来なら猿翁さんからあれこれ教われたはずなのにね。私は今後も出来る範囲で澤瀉屋を追いたいです。
      でね、実は八月納涼歌舞伎の3幕「新・水滸伝」のチケットをもう買いました。東京国際フォーラムでファントムを観る事が決まっているので日程を合わせました。
      なんせ香川さんの息子さんが出ますからね~。隼人さん歌之助さん幸四郎さんの名前もあるし、はずしたくなくって。

      にざ様も歌舞伎座で拝みたいです。はい、過ぎてしまった事を言っても仕方ない。79歳にしていまだイケメンぶりが残っているお姿を拝めた事に感謝しています。
      たま様は来月の南座で拝むつもりですがまだチケットを買っていません。南座だと「いつでも行ける」と思ってしまいギリギリまで買わないんです。

      かずこさんも歌舞伎をじわじわ好きになっているんですね。
      宝塚ファンには歌舞伎も好きになる可能性が十分にあると思います。
      はい、私は夫の単身赴任も幸いしましたし歌舞伎観劇も楽しみたいです。演舞場にも行ってみたいし。はい、すでに来月の歌舞伎座行きが決まっていますし、チャンスあれば一幕見席にチャレンジします。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  5. こんちゃん より:

    関西のたー様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    先日やっと「菊宴月白浪」の配信を視聴しました。

    隅田川の花火を背景に妻の幽霊が宙乗りで飛んで行ったり、浅草寺の屋根の上でまさかの瓦投げとか、ラストはヒロインが壁ぶちぬきで登場とか、南北さん60代後半になって、よくぞこんなエネルギッシュなトンチキ大作を書き上げたものですね。

    私はついついストーリーを真面目に追って、真面目に考えたがるタイプなのですが、

    前半は、出会って二言三言会話してズバッと切りつけ、

    「実はお前は、仇の家の子を養子にもらったのだ」

    うんぬんを淡々と繰り返すので、筋書きや登場人物に感情移入するまえにどんでん返しばかりされても…と戸惑ってしまいました。

    いちばん度肝を抜かれたのは、主人公が若様のために妻の生き血を…と思ったら、都合よく妻の幽霊登場、妻の死体も流れ着く!

    妻の死体の血を若様に献上!の流れです。

    この展開はなんなのだろうとびっくりしたのですが、調べてみると南北さんは世間の流行や時事ネタを取り入れるのにものすごく敏感な方だったそうです。

    南北と言えば「毒」。彼の芝居には”南蛮渡来の不思議な毒薬”が多々登場するそうです。

    「菊宴月白浪」が書かれたのは1821年ですが、当時は庶民の間でも「解体新書」など医学書が教養として読まれ、1804年に華岡青洲が外科手術に成功したり、西欧では輸血療法や種痘の試みが始まっていたりと、庶民の間でも医学に対する興味が高まっていたそうです。

    南北が輸血療法の噂を知っていたのかどうかはわかりませんが、この芝居における「生き血」療法は、当時の庶民の医学への興味を刺激する「ドクターX」みたいな要素もあったのかもしれない、と思いました。現代なら輸血とか骨髄移植の発想ですよね。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      こんちゃんさん、「菊宴月白浪」の配信を見たんですね。感想記事を読ませていただきました。
      オリジナルの定九郎のセリフですが、「50両!」と勢いよくというよりは、「ごぉじゅうぅりょ~おぉ~う」みたいな感じかもしれません。今年3月に南座で見た定九郎はそんな感じでした。ただこれ、ガチ仮名手本忠臣蔵とはいえ花形歌舞伎だったので定九郎も若い中村鷹之資さんが演じていましたから、頑張るあまりセリフをひっぱりまくったのかもしれません。

      「菊宴月白浪」ではオリジナルの定九郎を完全に違うキャラにしていましたね。
      はい、映像で、真面目にストーリーを追うと「トンチキ」以外の何物でもないかもしれません。私は生観劇だった事もあり楽しかったです。ただ、浅野家と吉良家のごちゃごちゃは生観劇でもわかりにくかった。昭和後半、平成、令和と生きている私ですが「仇」という観念がないからでしょう。

      妻の生き血の件は「どんな脳みそしてたらこんな発想が出来るんや?」と思っていたのですが、当時すでに庶民でも医学書に触れる機会があったんですね。
      にしても・・・死んだ妻をやたら「生きているかのように美しいまま」と表現するかと思っていたら、なんとその血を薬にするなんて・・・伏線回収にはなっていますが「オエーッ、死体から抜いた血なんか飲んだら余計具合が悪くなるわっ!」って思いましたよ。お芝居では効果絶大で若様が元気いっぱいになっていましたけど。

      南北の作品には「毒」も多々登場するんですね。
      そういや去年夏の南座で見たタマ様&ラブリンの「東海道四谷怪談」では、毒を飲まされたお岩が醜くなっていました。
      南北は医学・薬学への興味が強かったのかもしれません。
      当時は血液に型がある事は知られていなかったでしょうし、口から体内に入れるんじゃあ意味がないのですが「生き血を治療に使う」という発想をしただけでもすごいと思います。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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