2次元トップ娘はキツい[九月南座超歌舞伎 感想]

歌舞伎・芸舞妓

宝塚を愛していながら歌舞伎への浮気心が止まらぬ私。
先月の坂東玉三郎さんの南座公演に続き、中村獅童さん主演の九月南座超歌舞伎を初日に観に行きました。

阪急京都河原町駅の改札を通る時に目に入ったのが、

この看板。
いつの間にか「京都河原町ガーデン」なるものが出来ていました。駅からダイレクトに入れます。
家電量販店のエディオン(EDION)と、和テイストなレストラン・・・インバウンドをアテにしていたんだろうなぁ。

今回は11時の開演に向けて急がねばならず、ガーデンは素通りして南座へ。

もはや見慣れた感すらある景色なのに、雨が降っていても気持ちがアガりました。
ホンマ、京都って魅力的。

すぐにでも入りたい気持ちはありましたが抑えて、まずこの画像中央にあるイヤホンガイド受付カウンターへ。何故か南座内にはカウンターがなく、入場前にレンタルしないといけないんです。

マジで、歌舞伎観劇初心者はイヤホンガイドをレンタルすべし!

歌舞伎デビューした先月に体験し、その素晴らしさに感動したイヤホンガイドを今回も利用しました。もうこれ、マジで歌舞伎観劇ビギナーのマストアイテムですから!

残念だったのが、先月は紅ゆずるさんがイヤホンガイドナビゲーターをしてくれたのに今回は登場してくれなかった事。百花繚乱さんなる男性タレントさんが進行役で、「ですぅ~」「ますぅぅ~」といった語尾の抑揚がちょっと私の好みではなかったかな。
しかし歌舞伎の進行を解説してくれたのは別の男性で、NHKアナウンサーの如くクセがなく、非常に聞き取りやすい声でわかりやすく解説してくれました。感謝しているのに名前を忘れちゃった。

見えにくいかもしれませんが左耳にイヤホン付けてますw
今回の公演では「オリジナルペンライト」の販売がありまして、イヤホンガイドでもやたら購入を勧めていましたね。私としたことが価格チェックを忘れてしまいました。

14色のカラーチェンジに、6種類の大向う(掛け声)音声付きなのでそれなりに高額かと。
初心者は買わなくていいと思います。こうゆうのはベテランファンに任せて、初心者はただただ、イヤホンガイドのレンタルだけすればいいんじゃないかと。
歌舞伎独特の、時に初心者には聞き取りにくい言い回しもひとつひとつ説明してくれるし、

毛振り(けぶり)
とんぼ
襟裏返し

といった歌舞伎用語もジャンジャン教えてくれます。
実際の舞台を生で観ている時に抜群のタイミングで説明してくれるから、めっちゃ頭に入りやすい。
ちなみに先の歌舞伎用語の意味は、

頭をグルングルンする
アクロバティックにひっくり返る
遊女独特の粋な着付け

となります。
毛振りはホラ、あれですよ。超ロングヘアのカツラを被った歌舞伎役者が、横の髪をムンズと掴んだまま首や後ろの髪を激しく振り回す、あれ。この度の公演では1幕の踊り(宝塚で言うショー)で、獅童さんの豪快な毛振りを拝めます。

踊りは約45分で終わりました。獅童さんが出てきたのは最後の15分くらいでしたね。
先月の公演も踊りが先でしたし、そういえばタマ様が演出担当した去年の月組公演もショーが先でしたから、歌舞伎は踊りが先に来るのがメジャーなのかも。

25分の休憩を挟んで、お芝居に。
歌舞伎あるあるなのでしょうか、踊りでも出た世界がお芝居でも出てきました。

郭(くるわ)
揚屋(あげや)
間夫(まぶ)
太夫(たゆう)
新造(しんぞう)
傾城(けいせい)

といった、ああいった世界ですよ。
傾城は「けいじょう」とは読まず「けいせい」なんですね。城の主の懐具合を傾けるほどにお金を使わせる、スーパー遊女だそうで。
ニアリーな「花魁」の方が知名度が高く、宝塚のお芝居でも使われていますよね。それでも歌舞伎では形勢不利であろうと傾城を使うらしい、なぁんてw
そうそう私がすごく興味を持っている演目「阿古屋(あこや)」も、傾城の名前なんですよ。タマ様の当たり役だそうですがひょっとしたら当たり役すぎて引き継ぎがうまく出来ず、古希を迎えてもタマ様が演じるのかな・・・

と、話が逸れましたが、この度の超歌舞伎のお芝居に登場する傾城は、ちょっとワケアリだったりします。
なんと初音ミクという、バーチャルというか二次元のキャラクターが演じるんですよ。
歌舞伎じゃなく「超」歌舞伎ゆえですね。

宝塚で言えば、トップ娘が非・人間みたいなもんです。
「人間が演じる方がええんちゃう?」って思いません?私はそう思ったのですが、それでも観劇したのは「もしかしたら私の先入観をぶっ飛ばす、すっごい体験になるかも」なんて期待があったから。

けれど結果は・・・
タイトルの通り、ただただ、ただただ、
「キツいな」
な、バーチャルトップ娘でした。

バーチャルトップ娘は、舞台上に設置された上下ふたつのスクリーンに登場するんです。
ハッキリ言って、リアリティはゼロ。
1幕の踊りでは、毛振りする獅童さんに合わせてバーチャルトップ娘もスクリーンで毛振りしまして、確かにタイミングはピッタリ合っていたけれど、私にはどうにもしっくりこなかった。
生身の人間の方が良い、という気持ちが最後までありました。

古典芸能と映像技術のコラボを否定するつもりはないんです。
獅童さんが分身の術をして、スクリーンにたくさんの獅童さんが映し出されたりするのはすごく良かった。リアル人間を引き立たせるために映像技術を使うのは大賛成なんです。
けれど、この世に存在しないキャラクターが脇役ならまだしもトップ娘として君臨するのは、私にはどうにもこうにも、キツかったです。

あとついでに言うと、映像技術そのものが「超・最先端」という感じではなかったですね。宙組「シャーロック・ホームズ」でのプロジェクションマッピングの方が私にとってだいぶ刺激的でした。
OSK、劇団四季、歌舞伎・・・いろいろ浮気していますがホンマ、宝塚の舞台は特別にゴージャスです。

というわけで「超」歌舞伎ゆえのバーチャルトップ娘は微妙でしたが、楽しかった「超」もありました。
めっちゃ華やかなフィナーレがあった上に、最後の5分ほどだけですが撮影もさせてくれたんです。
獅童さんが

ここからはぁぁぁ~、
写真撮影ぃぃぃ~、
おおっ、けーぇぇぇ~~~

とOK宣言してくれて、そんなサービスがあるとは思いもしなかった私は慌ててカバンをゴソゴソ。

貧弱スマホゆえロークオリティではありますが、画像を残せると良い記念になりますね。

あと、歌舞伎なのに本物の女性の舞踊家さんも複数出ていたのも「超」ゆえでしょう(随分と細い女形だと思っていたらイヤホンガイドが女形じゃなく女性であると教えてくれた)。
全体的に若手が多く、器械体操の床選手のごとくアクロバティックな演技をしてくれたのも「超」ゆえなのかな。ほら、時代劇の殺陣のシーンで、切られた役者がやったら大げさに宙返りなどする時があるでしょ。あんな感じに大げさにひっくり返るのを歌舞伎では「とんぼ」と呼ぶそうです。先程も話題にした歌舞伎用語ですね。

そうそう、これもイヤホンガイドが教えてくれたんですが、
「歌舞伎の殺陣は様式美」
だそうですよ。
正面を向いたまま戦うんです。
そう、まさに宝塚と同じw
だからヅカファンなら歌舞伎の殺陣を違和感なく楽しめます。
宝塚は「洋物の歌舞伎」を目指したそうですから、歌舞伎の殺陣を模倣したのかも。

2幕のお芝居が終わったらもう、14時近く。
この長さも「超」歌舞伎なのかもしれませんね。先月のタマ様歌舞伎はもっと早く終わりましたので。

いろいろ書きましたが、3階席なら4,000円ですしね、良い経験をさせていただきました。
南座の3階席は宝塚大劇場のB席後列やBB席よりだいぶ見やすいように感じます。

ただ・・・傾斜がめっちゃ急なんですよ・・・
今後もエコノミーに観劇したいから、健康には気をつけなくっちゃ・・・

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コメント

  1. こんちゃん より:

    関西の、たー様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    たー様の記事で興味を持ち、中村獅童さんの超歌舞伎、YouTubeで予告編を拝見しました。新規のお客様向けの歌舞伎プロモーション映像としては、とても面白そうですね。

    ただ大きな舞台でバーチャル映像が生身の人間と”共演”というのとは確かに違うかも…コロナ禍のころ流行ったリモート演劇みたいなことを、生の舞台の上でやる、演出の一部としてではなく、2幕とも初音ミクを「主な出演者」として扱うのってどうなんでしょう?

    まあ、初音ミクはウイルスに罹患しないし、ケガもしないし、スキャンダルも起こさないという意味では安心安全ですが。

    この超歌舞伎の公演って、宝塚で言うと大劇場公演ではなく、水美さんのセニョールクルセイロのような、獅童さんのファン向けの外箱ダンスコンサートみたいなものなのでしょうか?

    松竹としては、獅童さんの一般層への知名度を生かして「新しい試みで歌舞伎に馴染みのない新規のお客を、阿古屋や助六のような本歌舞伎に引っ張ってこい!」という魂胆もあるのでしょうか?

    客席に、歌舞伎は知らないが初音ミクのファンだから来た、というような方がいて、そのような方に「獅童の歌舞伎面白かった。今度は獅童がやるガチの歌舞伎も見てみたい」と思ってもらうためには、2幕あったら1幕はもっと「普段の歌舞伎」に近い演出の、落語っぽい世話物のお芝居などを入れてもよいのでは?と思ったりしますが、どうなんでしょう。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      「宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ」管理人こんちゃんさん、YouTubeで予告編をご覧になったんですね。そんなのがあったんだ!と私も先程探してみました。9月2日アップのオリコンの動画が良いですね。毛振りも見せてくれている、サービス満点な2分。なのに再生回数は今朝の時点で7000ほどしかなくて残念です。

      この動画で予習していればバーチャルトップ娘がどんな感じで出てくるか覚悟が出来ましたね。私は全く予習していなかったので、バーチャルトップ娘のあまりのバーチャルぶりに違和感を感じっぱなしでした。
      はい、病気も怪我もスキャンダルもない、安心安全なトップ娘ですよね。それにひょっとしたら、いくら「超」歌舞伎とはいえ、本物の若い美女をトップ娘に採用するのは問題があるのかもしれません。
      バーチャルトップ娘はなかなか斬新だし、経済的だし、新しい客層を取り込むチャンスもあると思います。私は今回こそ面食らいましたが、今後は大丈夫なので、来年以降も観たいです。

      記事では踊りやお芝居の内容についてあまり触れていませんが、しっかりと歌舞伎らしさがあります。踊りは獅童さんとバーチャルトップ娘が出てくるのは最後の15分だけで、それまでは他の役者さんによる歌舞伎な踊りです。そしてお芝居は「土蜘蛛」という能を原作にした歌舞伎の演目を、この度の「超」仕様に書き下ろしているそうです。
      獅童さんがトップスターである事は間違いないのですが、宝塚ほどにトップスター至上主義ではないように感じました。ストーリーも、原作があるからか宝塚ほどハチャメチャっていないように思います。
      登場人物が多く、派手な演出もあるのでバウというよりは大劇場公演かなと。

      ただ、演奏はおそらく、録音です。大劇場公演は生だし、歌舞伎も先月のタマ様のは生でしたしね、このあたり「超」ゆえの節約かと。
      生演奏の方がありがたい気はしますが、録音にする事により本歌舞伎より入場料を抑えてくれてるのかもしれません。同じ3階席でもタマ様より1000円安かったので。
      とにかくいろんな努力をしているように感じます。
      ファンに新しい超な歌舞伎も楽しんでもらう。歌舞伎に縁のない層を「超」で取り込み、ゆくゆくは「本」に引っ張る。
      こういった魂胆はあるでしょう。
      うまくいっているのかは私にはわかりませんが、懸命に努力している事はすごーく伝わってきます。伝統芸能にあぐらをかかず、試行錯誤しまくっている姿に心打たれます。

      来年もきっと超歌舞伎、あると思うんです。
      内容が本歌舞伎に近付くのか、ますます超になるのかは来年のお楽しみですね。
      観に行きたいです。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  2. めい より:

    大変興味深く読ませていただきました。

    昔、それこそ玉三郎さんや仁左衛門さんが全盛期の頃は時々観に行ってたのに

    お正月には海老蔵さん(その頃は新之助さんでした)に睨んでもらいに行ったりしていたのに

    最近は全然行かず、マンガものの上演とか初音ミクとかどんな感じ?とずっと思ってました。

    こんな感じなんですね~。

    獅童さんは一般的には知名度の高い人ですが、お家が名門ではないのでこういうのにご出演なんですね。

    で、正直な感想なんですが歌舞伎は右肩下がり・・と思いました。

    一般受けを狙った演目なのでしょうがお客さんの入り、悪いですね。

    名門の家に生まれないと古典の大きい役はできない歌舞伎というシステムが今の時代には合ってないのでしょうか・・・

    玉三郎さんは希少な例外ですが。

    話が逸れますがタマ様ではなく、玉様とか玉さまと書いていただけると歌舞伎の記事っぽくなって嬉しいです。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      ブログ「日々の色彩」管理人のめいさん、宝塚だけでなく歌舞伎にも明るいんですね。

      そうですね、家柄によってほとんどが決まってしまう歌舞伎の世界は面白みに乏しいかもしれません。
      余計な争いごとを避けるための知恵であり、未来のトップスターを幼稚園児ほどの年齢から観客に愛してもらい収益に繋けるテクニックであったはずですが・・・観客の浮気先がいくらでもある現代ではマッチしないのかもしれません。
      宝塚は誰がトップになるかわからないから楽しいし、応援しがいがあるんですよね。スターシステムそのものは歌舞伎から拝借したような気がするんですが、上手いことアレンジしているように感じます。

      はい、記事には書きませんでしたが初日の初回なのにお客さんは少なめでして、26日までやるのに大丈夫かなという気持ちにはなりました。
      松竹のチケットはすごく不透明で、席の殆どを占める一等席が、定価は高額なのにあちこちで安価に二次流通しており気持ち悪いです。私のような善良な(?)観客に適正価格で売ってくれたらいいのに。今度御園座でやる阿古屋なんか、C席(三等席)でも7000円ですよ。たとえ南座や大阪松竹座での公演でも定価がこれじゃあためらいます。
      「超」歌舞伎のチャレンジといいイヤホンガイドといい、伝統芸能にあぐらをかかず努力しているのにチケットの売り方がマズイような気がしてなりません。
      学割もないから娘を引っ張り込むのもためらいますし。
      歌舞伎が右肩下がりである事は事実でしょうが、私のような新規ファンもいるんですから、上手く取り込んで欲しいです。

      あ、玉三郎さんの呼び方なんですが・・・どうも私が「玉様」や「玉さま」ではしっくりこなくて、かといって「たま様」では珠城りょうさんになってしまうので「タマ様」を使わせてもらっています。
      玉三郎さんには「玉」というまんまるなイメージより、猫のようなしなやかなイメージがフィットしているような気がしますし。
      あくまで歌舞伎に慣れていない私の発想であり、歌舞伎に慣れためいさんにとって違和感があるところ申し訳ないのですが、どうかお許しください。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

      • めい より:

        そうですね~玉三郎さんには猫のようなしなやかなイメージありますね。

        重い鬘に髪飾り、豪華な衣装で宝塚の娘役さんのように反っていた玉三郎さん。

        その舞姿は夢のように美しかったです。

        • 関西の、たー 関西の、たー より:

          ブログ「日々の色彩」管理人のめいさん、全盛期のにざたまをご覧になっただけに、すごく説得力あります~

          前回のコメントを読み、歌舞伎の衰退についてその後も考えていたのですが・・・一因に、後継者が少ないというのもあるかもしれません。
          庶民にも浸透している有名歌舞伎俳優は海老蔵さんがひとり勝ちかなぁ。市川猿之助さん始めテレビで活躍している歌舞伎役者はちょこちょこいますが、ドラマの視聴者を歌舞伎の舞台に招く事が出来ているかと言われると微妙かもしれないので。
          有名な女形はタマ様以外思い浮かぶ人がおらず、「玉三郎」の名前を誰が継ぐかもまだ決まっていませんよね。もうとっくに決まってなきゃいけないはずなのに。
          歌舞伎役者も観客も高齢化しているというか・・・チケットも年齢層も高いとなると、パワーダウンは避けられないかもしれません(と、また、高額なチケットへの愚痴を言ってしまってすみません)。

          いつもありがとうございます。
          今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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