OSK夏のおどり、悲しい低予算感とショーの問題点

OSK

OSKはツイていません。
宝塚だって苦しいんでしょうが、現在、大劇場も東京宝塚劇場も公演を再開しています。
なのにOSKは、抱えている小箱、OSKレビューカフェがたまたま大阪にあるという理由だけでずーっと、足踏みが続いているんです。

重要な大箱イベント「夏のおどり」にしたって開催地が大阪松竹座なため、土日公演が中止になってしまいました。
新トップスター、楊琳(やん・りん)さんのお披露目公演なのに、期間が6月12日から20日で、土日がガッツリ緊急事態宣言期間にかぶってしまったんです。
平日のみ、14日から18日にかけての公演となってしまいました。

私はもともと、定価8,500円の一等席をセディナスペシャル価格の6,000円で手に入れていたんです。しかし日曜日公演のチケットだったため紙クズと化し、仕方なく14日のチケットを定価で購入して松竹座に向かいました。

大阪松竹座に到着。せっかくなので初日の、初回公演(11時)を楽しむ事にしたんです。

定価なので二等席にしました。4,500円。
楊さんのトップお披露目公演を見逃すわけにはいかないんですが、懐に無理は出来ません。
手ぬぐいとシールは娘へのお土産です。私よりOSKを愛しているのに、平日公演だけじゃ学校があるから観劇出来なくて可愛そうなので。

さて・・・
そろそろ、公演の内容そのものについて書くとします。
はっきり言います。物足りなかったです。
正直、期待はずれでした。

そう感じた理由を自分なりに考えたので、以下に記してみます。

まず、期待値が高すぎた、というのがあります。
「春のおどり」がすごく良かったので、「夏のおどり」はもっと良いに決まってる!と決めつけていました。
なんせ、トップスターのお披露目。OSKの気合いが詰め込まれているはずだ、って。

また、構成にもとても期待していたんです。
OSKのおどりシリーズは「和のショー・洋のショー」の組み合わせが定番だったのに、この度初の「洋のショー・洋のショー」となったんですね。
この話を楊さんのお茶会で聞いた時はもう本当に、楽しみで楽しみで仕方がなかったんです。
何かと古いしきたりに縛られているように見えるOSKが生まれ変わるような、そんな気すらしていました。

けれど・・・実際に観劇したら、退屈してきたんですよ。

この通り、一幕が40分、幕間25分、二幕45分。
宝塚よりうーんと、短い。
なのに、一幕だけで洋のショーにお腹いっぱいになってしまったんです。お腹いっぱいというより、飽きてきたという方が正しいかもしれません。
そんな気持ちで迎えた二幕もまた、洋のショー。
前トップ桐生麻耶さんの力強い歌や、何故かトップ娘がふたりいるもののやっぱり舞美りらさんがメインなんだなと思われしデュエットダンスなど見どころはあったものの、その他はほとんど覚えていません。

ショーって・・・飽きやすいんですね。
今回、初めて気付きました。
ショーってワクワクするけれど、「ひたすら受け身」なんだと。
お芝居と違って、展開についてあれこれ考えない。

普段「ケバケバ・パーッ!がいい!」「難しいのは嫌!」って記事に書き続けている私ですが、考える事がほとんどない「受け身のまま」では飽きてしまうんだと、ホンマ今回、初めて気付きました。

宝塚は「芝居の一本モノ」と「芝居とショーの二本立て」ですがこれ、理由があるんですね。
なんで「ショーの一本モノ」「ショーの二本立て」がないのか、よーくわかりました。

宝塚と異なりOSKは長年、ショーばかりのおどりシリーズを続けていたけれど、「和のショーと洋のショー」である事に意味や理由があったんですね。
「和・洋」の組み合わせだからこそ、観客は幕間を挟んで気持ちを切り替える事が出来たんです。

これ、飲み会と似ているかも。
縄のれんからイタリアンにハシゴなら、気持ちを切り替えてカンパーイ!出来る。
けれど縄のれん連発やイタリアン連発では、仕切り直ししにくいでしょう?

ショーも、連チャンで洋だと、気持ちを切り替えにくいんですよ。
スターさんやスタッフさん達にとって幕間が重要なのはわかっていますが、いち観客だった私にとって夏のおどりは「これなら幕間、いらんのちゃう?」でした。

幕間が本当に、ただの、トイレ休憩になってしまったんです。
一本モノのお芝居の幕間なら、トイレに並んでいる間もドキドキ・ワクワクします。
初めてのお芝居なら「結末はどうなるんだろう?」、再演なら「あのシーンが楽しみだ」といった感じで。
お芝居とショーの二本立てなら、幕間はお芝居の感想とショーへの期待で頭いっぱいになります。

しかし・・・洋のショーが終わって、この先また洋のショーが待っている幕間って、本当にトキメキがありませんでした。

洋のショーのみで「飽き」を防ぐにはキャストをとっかえひっかえするとか、とてつもなくゴージャスな装置を使いまくるとか、生オーケストラで勝負とか、そんなのが必要なのでしょう。
ですが、OSKにはこういった経済力が、なさそうです。

というか・・・

夏のおどりは、はっきり言って・・・

低予算だろう。

って思わずにはいられなかった。
春のおどりよりだいぶ、予算を削っているんだろうと。

洋のショーをダブルという飽きやすいリスキーな構成なのに、残念ながら、一幕二幕それぞれのショーそのものの演出力が春のおどりよりだいぶ、劣っていたように感じます。

春のおどりでは、かつて宝塚で活躍していた荻田浩一さんが二幕の洋のショーを演出しました。オギーと呼ばれて愛されている彼の演出って派手でね、大きな装置がにょき~ん!と登場しましたし、めっちゃ楽しかったんです。
一幕の和のショーだってメリハリがあり、こちらは尾上菊之丞さんという日本舞踊家元の演出でした。

なのに・・・
夏のおどりの演出家には、オギーも伝統芸能役者もなし。
一幕二幕とも平澤智さんという方が演出したそうです。
飽きやすい洋のショー2本立てなのに、同じ人に任せたという事ですね。

平澤さんが特別悪いとは思いません。2019年の「STORM of APPLAUSE」も演出したそうで、私はこれ、南座で生で観ているんです。この時は楽しかったんです。
でも、この時はお芝居との二本立てでした。
しかもお芝居「海神別荘」が本当に本当に、本当に素晴らしかったんです。超感動の大満足。
感動でしびれっぱなしな中で幕間が終わり、ショーもそれなりに良い内容だったので楽しめたんだと思います。

以上が、私なりの考察です。

まとめてみると、問題点はとにもかくにも、予算にあったんじゃないかという気がしてきました。
オギーも伝統芸能役者もそれなりの対価を求めるから予算的に頼めなかった。
装置ひとつ用意するにもお金がかかるから派手派手には出来なかった。
そうゆう事じゃないかと。
気合いは十分に入れていたけれど、予算という後ろ盾がなかったというか。

おかわりは・・・ないですね。
8,500円の一等席と4,500円の二等席しかないのがまた、ネックです。大劇場のように2,000円の席や2,500円の立ち見があれば、違ってくるのに。

というわけで・・・
エンタメにリアル生活の苦しみからの開放を期待している私が

「世の中、ゼニがすべて」

を感じっぱなしとなった、OSK夏のおどりでした。

コメント

  1. こんちゃん より:

    関西の、たー様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    私は宝塚ファンですが、去年動画配信祭りでOSKさんの配信を視聴してから、同じ少女歌劇出身劇団として気になっておりました。貴重なレポ、ありがとうございます。

    せっかくの大阪松竹座という大劇場公演で、洋物のショー2本立てとはすごいですね。若手に大劇場で芝居する経験を積ませる大切な機会と思うのですが。

    戦前のころから、宝塚はレビューに特化せず「歌入り芝居」にこだわり、戦後東宝の大物の菊田一夫を招聘していたりしたが、

    松竹系のSKD(OSKの姉妹劇団)とかOSKはショーに特化して、あまりお芝居に力を入れていなかった、と聞いていましたが、今もなのですかね。専属の「座付き作家」が何人もいる状態ではなさそうにお見受けするのですが、違ったらすみません。劇団四季ですら、今は「座付き作家」はいなくて、作品ごとに外部から招へいしているそうですからね・・・

    宝塚では植えじいやダイスケ先生や小池先生や、全部で何人いるんだ、というくらい座付きの作家がいて、「ベネチアの紋章」「ル・ポアゾン」は旧作のお芝居の脚本を引っ張り出して、衣装は倉庫から出してきて、振付は資料映像を見ながら再現、の過去の遺産を生かした「低予算」で、あの水準のものがほいほい作れる、というのは、演劇界の「普通」ではないのでしょうね。

    宝塚は戦前から、「座付き作家」を阪急社員の待遇で、海外留学までさせて育成し続けてきたおかげで、ウエクミが迷作書いたの、ウエケーが説教クサいのと常にわあわあ言えるのは幸せなことかもしれませんね。

    松竹さんが、演出家を紹介してくれないのだろうか、と思うのですが、予算的に厳しい、の負のループなのでしょうかねえ。「求む、OSK専属演出家助手」で求人を出しても、誰の助手に付くのだ?いっそ、OSKから宝塚に研修に行って学んでもらう?(宝塚の中村一徳先生がOSKの外部演出をしたことがあるので、可能性はあるかも)

    が、「OSKの伝統」はどこにいった?になりそうですね・・・

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      「宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ」管理人こんちゃんさん、いつもありがとうございます。シティーハンター経由とはいえ競馬場、そしてディズニーランドと、まぁ宝塚はコラボに精力的ですね。このあたり、OSKが出来ていない事だと思います。どちらもプライドが高そうなのに、宝塚は時として、なりふり構わないところがありますね。

      OSKは松竹とつながっているんですから、その気になればなんぼでも、演出家を紹介してもらえると思います。が、予算の都合じゃないかと。すべてはこれじゃないかと。
      私が思うのは、たとえばオギーに頼んだら、「おいらに任せるからにはド派手にやらせてもらうぜ!」と、オギーへの謝金だけでなく派手な装置などにも費用がかかるのかもしれません。オギープロデュースの洋のショーはホンマ、ヅカっぽい派手さがありましたから。

      はい、宝塚は演出家を直接雇用しているんですよね。それゆえ、権利がいろいろイージーになるんだそうです。森下信雄さんの本に、自慢話のひとつとして取り上げられていました。まぁ確かに、権利を完全に掌握しているからこそ、何十年も昔の脚本を引っ張り出すなんてワザが出来るんでしょう。このあたり、権利に超うるさいブロードウェイやディズニー作品が多い四季との大きな違いかもしれません。劇団員の実力に自信がすごーくあるから座付きなんていらねぇ!ってなったのかな。こんちゃんさんが記事にしていた通り四季は衣装も随分、ヅカとは違いますね。

      OSKのお芝居、良いんですよ。舞台装置や衣装には歴然とした違いがありますが、スターさん達には十分にお芝居力があります。この記事にも書いた「海神別荘」なんてもう痺れる級でした。桐生さんがもう本当に素晴らしい男性、じゃなかった男役でね、「天使の歌が聞こえる」も良かったですよ。ダンスだとリフトが超うまくて、男性じゃないのが不思議なくらい。
      楊さんはお芝居の声が良く「愛と死のローマ」も陳腐なタイトルかもしれませんが楊さんにカエサルがすごーく似合っていてね、クレオパトラの舞美さんもそりゃあもう良かった。楊さんは桐生さんと比べると歌はそこそこでしたがこの度の夏のおどりでは十分に声が出ていました。
      決して、スターさん達がどうこう、という事ではないんです。

      こんちゃんさんは去年の無料配信をご覧になったんですね。
      音声トラブルなどあって、イライラしませんでした?無料ならまぁ許せても、有料で買った円盤すらいろいろ問題があり、OSKの映像技術には相当問題があります。
      遠征にはなってしまいますがこんちゃんさんが大劇場にいらっしゃる時のついでに、是非ナマで、OSKの舞台を観ていただけたらなぁと思います。
      定価で買うのがバカバカしくなるほどにチケット価格に不透明性があるのが、残念なんですけどね・・・これも伝統?

      もう一度言いますがスターさん達は皆、素敵です。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  2. ごん より:

    こんにちは
    桐生さんファンですが、OSK全体を応援している者です。
    たまたまこちらの記事を読ませてもらい、今回の夏のおどりを観て自分が感じた「物足りなさ」はこれだった‼︎と
    勝手に共感させて頂きましたので、思わずコメントしています。
    前回、前々回の春のおどりが良過ぎたのかもしれませんが、今回は淡々と盛り上がりなく進行したように感じましたし、何度も観たい、とはなりませんでした。
    そして私はOSKの和物のショーが好きなんだ!と改めて気付かされました。
    前回春のおどりの大好きだった(疾走高田馬場)の場面等は桐生さんが居ればこそ、の演目かと思いますが、、。
    とにかく、すごく的確な内容に感銘しました。ありがとうございます。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      ごんさん、コメントありがとうございます。私も桐生さん、大好きです。歌もダンスも演技も、とにかく大好きです。
      はい、前回の春のおどりは本当に良かったですね。桐生さんってハーフなのにむちゃくちゃ和モノが似合いますよね。
      前々回の春のおどりはDVDで観ましたので映像技術に難を感じたものの、内容は良かったように思います。

      どうしても宝塚と比較されがちなOSKですが、桐生さんの存在によって差別化されていた事に気付きました。
      「唯一無二の男役」というキャッチフレーズの通りです。
      楊さんはとても素敵な方。とはいえ楊さんと若手だけではもう本当に「宝塚っぽい劇団」になってしまいます。桐生さんにはまだまだ、頑張っていただきたいです。

      予算面、団員数、知名度で圧倒的に不利なOSKの今後は、どうやって差別化を図るのかにかかっていると思います。
      本来なら親しみやすさ、会いに行きやすさで勝負出来たはずですが、コロナが大きな壁となってしまいました。

      試行錯誤しているのでしょうが、安易にギャクや喜劇には走らない方が良い、そんな気が私は、します。
      この度の夏のおどりでの、「スーパーマンっぽい、マイケル・ジャクソンっぽい、プレスリーっぽい」ところ・・・私は、スベっているように感じました。
      権利の問題か、明らかに似せているのに彼らのオリジナル曲がひとっつも出なかったのがまた、残念でしたしね。ダンスもマイケルっぽいようで、違うような。

      私は本当に好きなんです、OSK。
      来年2月の100周年記念公演、楽しみにしています。おそらく和モノも入るでしょう。2月の松竹座で感動し、7月に南座でおかわり!となるよう祈っています。

      この度はコメントくださり本当にありがとうございました。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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