北翔海莉の夫と息子の将来は…[藤山寛美三十三回忌公演 感想]

ジェンヌさん

北翔海莉さんのご主人、藤山扇治郎さんの演技に興味があった私。
それゆえ南座(感想記事はこちら)と大阪松竹座(感想記事はこちら)で松竹新喜劇を観劇したのですが正直かなり、演出がフィットしませんでした。

それゆえ「もう観なくてええわ」と一旦は決めたんですけどね、ちょっと心残りがあったんです。
扇治郎さんの伯母(北翔さんにとっての義理伯母)である藤山直美さんの演技をまだ観ていなかった事。

直美さんは上方喜劇を代表する喜劇役者、藤山寛美さんの娘です。
そして直美さんの甥が扇治郎さんになります。
で、

この度、「藤山寛美三十三回忌追善 喜劇特別公演」に直美さんも扇治郎さんも出演するとの事で、「たぶんフィットしないんだろうなぁ」と思いつつ観劇に行ってみました。

おさらいしますと北翔さんのご主人は伝説の喜劇役者の孫なんです。
ちなみに藤山寛美さんのウィキには

著名な家族としてバッチリ、北翔さんのお名前があります。

あと尼崎出身の私としては桂米朝さん(故人)が懐かしく、息子である小米朝さん(現在は桂米團治さん)の姿も拝みたい気持ちがありました。
私が子どもだった頃、米朝さんは尼崎に住んでいて、尼崎市民にとって尼崎市長より有名で偉い存在だったんです。

つまり私にとって、

こんな感じでした。

時間表です。
お芝居→思い出映像→お芝居
の構成ですが実際は2つ目のお芝居の後に直美さん単独での挨拶があり、この15分ほどのトークが最も印象的で、大阪松竹座に来て良かったと心から感じました。

座席は3階席の2列目。
これまでも何度か取り上げましたが、大阪松竹座の3階席は1列目を選んではいけません。

というのも、1列目だとガラス越しに観劇する事になってしまうんです。
もうこれ、むちゃくちゃ不快なんですよ。ガラスは非常に高品質ではありますが、せっかくの生観劇なのに物理的な邪魔が入る事がむちゃくちゃ辛い。自分のペースで覗き込む双眼鏡とは異なり終始ずーーーっと、ガラス越しですから。
この度の観劇で1列目に座っていた方々はガラスの存在をご存知なかったんですね。ガラスを指さして「こんなんあるの、知らんかったわ!」とご立腹でした。

さて、感想としては・・・
お芝居はふたつともやはり、相変わらずのスローテンポでした。これまで観劇した松竹新喜劇と同じノリ。

ストーリーが悪いわけじゃないんです。

扇治郎さんは1本目のお芝居「愛の設計図」のみの出演で、舞台はいざなぎ景気時代のとある工務店。トップスターな渋谷天外さんが扇治郎さんをイビっているようで実は愛情たっぷりとか、扇治郎さんと工務店社長の娘の恋愛に横槍が入ったりとか、そんな話。もちろんハッピーエンドです。

直美さんは2本目の「大阪ぎらい物語」のみの出演で、舞台は大正時代の大阪。老舗問屋のお嬢様な直美さんが自分や大切な人達の願いを叶えるためにドタバタし、もちろんハッピーエンドです。

扇治郎さんは2番手で、う~ん、おぼっちゃんな感じだったかな?
直美さんはまごうことなき「トップスター不在のトップ娘」で、誰よりも存在感がありました。ちなみに米團治さんもこちらのお芝居のみ登場していて、お顔がもうまんま、お父様である米朝さんに生き写しでした。

どちらのお芝居もホンマ、誰も傷つかない、皆が幸せになるストーリー。
だけど・・・もうとにっかく、テンポが遅い!
遅い上に同じネタを繰り返すのもお約束で、ますます退屈するんです。
歌うわけでも踊るわけでもないしね。

私は思います。
現代人が上方喜劇の良さを理解するには、覚悟が必要であると。
歌舞伎の良さを理解するような感じね。だって御寮さん(ごりょんさん/大阪の船場言葉で「奥様」のこと)とか、関西人の私でもわからぬ単語を平気で使うし。歌舞伎ならイヤホンガイドが解説してくれるけど、上方喜劇だとそういったサービスがないので自分で調べなくちゃいけません。

数をこなせば上方喜劇のスローテンポを受け入れ、独自の良さを感じる事は出来そう。
上方喜劇ブームだった頃の観客にはこのくらいのペースでちょうど良かったんだ、と勉強にもなります。

そして今回は初めて拝んだ直美さんの演技を通し、寛美さんの特技が「徹底的に阿呆を演じる」であった事がよーくわかりました。
直美さんはもうアラカンなのに、お芝居では七五三よりもド派手ピンクな着物に身を包み、しかも鬘は舞妓のような「割れしのぶ」。言葉遣いといいアホアホ全開でした。
しかしお芝居後のご挨拶でのキリッ!!!としたお姿とお話ぶりに「ああ、さっきまでは演技だったんだ」と気付いたんです。お芝居では退屈していた私ですが直美さんのご挨拶ではずっと集中していました。

そして帰宅後調べて思ったんです。直美さんは自身が藤山寛美の息子ではなく娘であったために、息子ならせずに済んだ苦労をわんさかしたんだろうと。
SPICEに掲載されたインタビューでは

>この子(扇治郎)は私と違って男に生まれてきました。

と発言し、チャンスに恵まれているのだから活かしなさいと扇治郎さんを激励しています(SPICEのインタビュー記事はこちら)。

私は直美さんに強い魅力を感じました。こういった感覚は松竹新喜劇では初めてかもしれません。
今回の公演では扇治郎さんと別々だったから、共演するお芝居をやるなら観たいです。なんかね、退屈なストーリーも覚悟出来そうなんですよ。

直美さんにとって扇治郎さんが藤山寛美の名前を継ぐのは決定事項なのでしょう。
という事はつまり、扇治郎さんと北翔さんの息子さんも継ぐ前提なのでしょう。

でも・・・
直美さんに魅力を感じた私でも、上片喜劇の将来は多難な気がします。
だって、
あくまで私の感覚ですが、現時点ですでに、

ほぼ、オワコン

だと思うから。

座席はガラッガラだし、観客のほとんどが高齢者。
若い観客を呼ぶのは難しいと思うんです。魅力をほんのり感じた私でも、友達を誘うなら喜劇より歌舞伎が先だし。

扇治郎さんが二代目藤山寛美を襲名するなら急ぐ方が良いと思います。直美さんが元気いっぱいのうちに。
お披露目公演の集客は松竹のツテ頼みになるかもしれませんね。
そうゆう意味では妻である北翔さんの顔の広さが活かされる可能性はあるかもしれません。

と、ここで締めるつもりでしたが、付け足します。

この記事で「藤山寛美」の文字を見て、すぐにわかりました?

ひょっとしたらここまで読んでくださった親切な読者さんでも、伝説の喜劇役者は
ふじやま・ひろみ
という女性だと思っている人がいるかもしれないので、付け足します。

松竹は頑張っているけれど、
「ふじやま・かんび」
という伝説の喜劇役者の存在は、あまり有名ではないかもしれません。
関西、それも尼崎という、かなりお笑い文化が根づいている地域の出身である私でも知りませんでした。すべては北翔さんの結婚がきっかけでした。

コメント

  1. こんちゃん より:

    関西の、たー様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    たー様の記事を拝読し、ネットで調べてみました。

    松竹チャンネルや博多座チャンネルで、

    子供の頃、土日の昼下がり、TVでやっていた「吉本新喜劇ではないほうの新喜劇」、ドリフのコントの「バカ兄弟」みたいなのをやっていたおじさんに、久しぶりに再開できました。

    (当時藤山寛美さんは闘病中か没後だったと思うので、追悼放送だったのでしょうか。)

    寛美さんの、良い意味で化け物的な存在感、笑いの狂気的なものにびっくりしました。ちょっと今のTVドラマに出ている人で、芸風が似ている人も思いつきません。

    藤山扇治郎さんがTVに出ているのを拝見したことがありますが、おじい様とは芸風が被っていないように見えます。

    襲名したとして、おじいさまの当たり役を演じ継ぐ、というのも・・・山手樹一郎さんの作品を掘り起こして、夢介千両みやげくらいの時代の大阪の設定にして、チャンバラも入れて歌って踊って、二代目寛美さんと北翔さんの夫婦漫才的ホームドラマをこしらえたほうが、楽しいのでは。せっかく芸達者なお嫁さんを貰ったのですから。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      こんちゃんさんっ!そう、そうなんですっ! 扇治郎さんって寛美さんと被っていないんですよね、芸風が。
      扇治郎さんって結局、おぼっちゃんなんですよ。
      ウィキっただけでも経歴が違いすぎるんですよね。大阪大空襲を経験して満州に渡り、終戦後ソ連に抑留されたけれど辛くも生き延びた寛美さん。父親である寛美さんが喜劇役者として成功したものの型破りな金遣いの荒さで借金まみれになり苦労が耐えなかった直美さん。このおふたりの経歴を読んでから扇治郎さんの経歴を読むとかなりシンプルで、言ってみれば「ただただ血筋だけで舞台やテレビに出ているおぼっちゃん」のように感じます。
      世襲制は歌舞伎もだけど、歌舞伎にはビジュアルや舞踊などアピールポイントがたくさんありますからね。同じ大阪松竹座や南座での舞台でも松竹新喜劇はかなり地味ですし、セリフが生命だからインバウンド需要にも不向きです。
      歌舞伎だってヤバそうなんですから、松竹新喜劇がもっとヤバくて当然なんですよ。

      昔のスローテンポな演出を変えないのは、「『上方』喜劇」としてのプライドなのでしょうか。直美さんはご挨拶で何度も「カミカタ」って言ってましたし。吉本新喜劇は上方ではない、という気持ちがあるのかもしれません。

      扇治郎さんの「二代目藤山寛美」襲名、きっとあるような気がします。直美さんの悲願っぽいし。
      本気で生き残るにはホンマ、こんちゃんさんの仰る通りチャンバラや歌や踊りを採用したり、北翔さんに出てもらったり、息子さんを早くから御曹司として披露するといった工夫が必要のように思います。
      でも直美さんが許さないような気がするんですよね・・・

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  2. うみひこ より:

    たーさん
    こんにちは。
    私は藤山寛美の現役時代を知ってます。TVですが。高校まで関西なので昼のTVはたいがい吉本か松竹のお笑いをやってました。

    藤山寛美はどんなストーリーでも演じる役に阿呆になるところと泣かせる場面があり、またこれかよというかんじ。もうだいぶ前からオワコンだった気もします。

    藤山直美は円広志と2人でいろんなところに行って適当におしゃべりしてる番組は面白かったです。わりと好きです。

    尼崎ご出身なんですね。私は将棋ファンですが、将棋棋士の豊島将之九段は尼崎市在住です。(愛知県出身ですが。)ヒョロっとしたメガネでおとなしいかんじなのになぜか女性の琴線に触れるらしく、豊島九段が出るタイトル戦の大盤解説会には女性ファンが多数押し寄せます。あだ名は「きゅん」。藤井聡太五冠や斎藤慎太郎八段もですが関西所属には女性に人気の若手棋士が多いです。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      うみひこさん、はい、寛美さんはTVにもよく出ていたようですね。「藤山寛美 偲面影」で数々の古い映像が流れ、テレビでの活躍にも触れていました。舞台でお客さんからリクエストを聞いてそのまま演じたりと、アイデア豊かな方だったんですね。

      はい、寛美さんの芸風ってある意味、水戸黄門っぽいワンパターンがウリだったのかもしれません。私自身トシをとり、あまりにもハラハラさせられるドラマはしんどいと思う事がありますからワンパターン需要があるのはわかるような気がします。この度の観劇でも笑い声がよく上がっていたんですよ。かなり高齢の方にとっては安心感ある笑いなのかもしれないし、いざなぎ景気も懐かしいのかもしれません。

      直美さんと円さんがお出かけしておしゃべりする番組があったんですね。
      直美さんはお芝居ではトロトロ話していたけれどその後のご挨拶では別人レベルにハキハキとトークしていて、頭の回転が速い方である事がよーくわかりました。

      うみひこさんは将棋ファンなんですね。豊島さんって藤井聡太さんが出てくるまで、三段昇段の史上最年少記録を持っていたんですね。
      私自身「ヒョロっとしたメガネでおとなしい」人がけっこう好きだったので、豊島さんの「きゅん」のニックネームもわかるような気がします。
      豊島さんは尼崎での対局で尼崎在住である事を明らかにしたそうですね。
      尼崎もいろいろですが豊島さんは阪神沿線というよりは阪急沿線かな。最寄りは武庫之荘駅っぽいw 桂米朝さんの邸宅も武庫之荘駅が最寄りなんですよね(私が子どもの頃の話なので今もあるかは不明)。私が住んでいた文化住宅も武庫之荘駅から徒歩圏でした。
      小学3年生までは宝塚南口駅のそばに住んでいたのに大劇場デビューする事なく武庫之荘に引っ越したんです。

      貧乏育ちゆえ芸術や文化に触れるチャンスに乏しく、音符は読めないし、将棋のルールもわかりません。さすがにオセロのルールはわかるけれどすごーく弱いんです。先の先まで読む、というのが出来なくて。だから将棋のルールを覚えてもきっとダメダメでしょうね。なので私よりオセロが強い人と結婚したかったけれど、ダンナと私ではどっこいどっこいですw

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  3. めい より:

    子供の頃から宝塚や映画、お芝居や競馬や野球等よく連れて行かれたので、藤山寛美さんは私には喜劇の大スターなんですが、もはや知らない人が殆どの世の中になっってるんですね・・・

    天然のアホを演じたら最高な人でしたが、斬新なアイデアも出せる人だったようで公演当日に来たお客さんのリクエストで決まった演目を上演~というのもありました。
    座長の寛美さんが「演目が決まるまで支度ができまへん。役者は楽屋で衣装も着ずにまってます~」とか、言うてはりました。

    壮さんの宝塚退団後、初ミュージカル「エドウィン・ドルードの謎」。
    トニー賞も受賞したブロードウェイミュージカルなんですが、これも客席参加型でした。お客が投票で犯人役等を決めるのです。
    投票用紙
    https://ameblo.jp/creativecolors/entry-12149115912.html

    寛美さん三十三回忌追善公演なのに、閑古鳥の鳴いてそうな客席ですね・・・直美さんと扇治郎さんと北翔さんでお客を呼べる、何か斬新な出し物をつくっていく~という風にはならないでしょうか。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      めいさんにとって藤山寛美さんは喜劇の大スターなんですね!
      はい、寛美さんの思い出映像にもリクエストの様子が紹介されていました。舞台に作品の名前がズラッと並んでいて、お客さんに紙でリクエストを書いてもらい、松竹新喜劇のメンバーが回収して・・・といった感じでした。ぎゅうぎゅうの客席は盛り上がっていたし、リクエスト用紙を回収する方々も楽しそうで、何よりすごく若かった(数名は現在もいる方でした)。良い時代だったんでしょうね。

      壮さんの退団後初ミュージカルの記事、読ませていただきました。投票用紙が名前だけでなく、役者さん達の顔写真付きなのが良いですね。
      観客にとっては楽しいけれど、演じる側は大変だったでしょうね。
      寛美さんのリクエストでは演目そのものが直前に決まるんだから役者さんはもちろん、衣装や舞台装置を準備する裏方さん達も相当大変だったはず。
      それが出来たのは寛美さんの力量ゆえなのでしょうが、力量ある人には必ず欠点もそれなりにあるもので、ワンマンだったり豪遊で借金まみれだったりといろいろあったようですね。

      扇治郎さんは豪遊や借金で妻子を悲しませたりはしないように思います。同時に、扇治郎さんひとりの力量で多くの観客を呼ぶ事は難しいように思います。
      それに観客うんぬんの前に、劇団員のほとんどが扇治郎さんよりだいぶ年上なのですからまずまとめるのが大変じゃないかと。
      芸能の世界って、家庭を幸せにしつつ成功させるのはすごく難しいのかもしれませんね。

      直美さんと扇治郎さんと北翔さんで客を呼ぶ事は出来そうだけど、直美さんはSPICEでのインタビューでハッキリと「松竹新喜劇には男の作品がたくさんあるんです」「うちは男尊女卑」と言い切ってますから、直美さんがお元気なうちは北翔さんが隣でバリバリ頑張る事は出来ないんじゃないかと。
      もし松竹新喜劇に勢いがあれば直美さんの跡継ぎとして北翔さんが「二代目藤山直美」を襲名し、二代目藤山寛美とのリアル夫婦出演なんてしたら楽しかったでしょうね。だけど実際の松竹新喜劇は「風前の灯」なのですから、北翔さんは北翔さんのままで活躍するのが良いでしょう。松竹新喜劇では歌ったり踊ったり出来ないですしね。

      いつもありがとうございます。
      家庭の都合でお返事が遅くなってしまいすみませんでした。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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