片岡愛之助に今井翼、扇千景の子孫[歌舞伎GOEMON 感想]

歌舞伎・芸舞妓

昨日10月17日の午後、大阪松竹座に行きました。
緊急事態宣言が解除されたからでしょう、だいぶ賑わいが戻ってきていました。

観劇するのは「十月花形歌舞伎 GOEMON」。
宝塚で言うトップスターはご存知、片岡愛之助さん。半沢直樹でオネエっぽい官僚を演じて一気に有名になりましたね。
で、2番手は今井翼さん。そーなんです、「タッキー&翼」の今井翼さんです。
2018年にジャニーズ事務所を退所しその後、松竹エンタテインメントの所属になったそうで。そーなんです、紅ゆずるさんや舞羽美海さんも所属している事務所です。
その事はわかっていたんですが・・・他にもすんごい宝塚繋がりがある事に、観劇後に気付きました。
なんと、宝塚歌劇団41期生で退団後に政界進出もした扇千景さんの、息子さんとお孫さんが出演していたんです。お孫さんである中村壱太郎(なかむらかずたろう)さんが美しい女形だったので観劇後に調べて知りました。

というわけで・・・
歌舞伎ではありますが、宝塚と繋がりまくりだから宝塚ブログで記事にするのにピッタリですね♪

イヤホンガイドはホンマ、おすすめです!

3度目の歌舞伎観劇となります今回ももちろん、イヤホンガイドを利用しました。
今回も良かったですよー!
ちゅーか「初心者はこれがないとダメ」って言ってもいいくらいかと。

というのも歌舞伎って展開がのっそりしている時があるんですね。かと思えばいったん会話が始まるとトトトとスピーディーに進行し、しかも独特の言い回しが聞き取りにくい上に聞き取れてもどうゆう意味かわからなかったりするんです。イヤホンガイドがあればそのあたりをフォローしてくれますが、これがないと「何このノンビリとした空間」と退屈したり、「会話が聞き取れない、わからない」と困惑するように思います。もうねぇホンマ、プログラムは買わなくてもいいからイヤホンガイドは必ず借りていただきたいですね。予習なしでも安心して観劇出来ますよー!

さて、イヤホンガイドを片手に、中に入ると・・・

ををー!
一見、歌舞伎ってわからないような雰囲気!
五右衛門を現しているGOEMONの文字とキリスト教の象徴である十字架が共存しているんですよ。この演目のごちゃまぜぶり、そのまんまです。

まだたった3回しか観ていない歌舞伎ですが、歌舞伎には大別して「伝統キープなタイプ」と「何でもウエルカムなタイプ」あるように思います。タマ様の日本振袖始は前者で、獅童さんの超歌舞伎や今回のGOEMONは後者かと。
歌舞伎未体験の人にとっては前者のイメージが強く、敷居が高いと感じるように思うんですね。私もそうでした。が、何でもウエルカムタイプはホンマ、やりたい放題というか見境ないというか、何でもござれなんですよ。だって獅童さんの超歌舞伎はトップ娘がバーチャルだし、今回の愛之助さんのGOEMONは2番手が元ジャニーズで、しかもフラメンコミックスですから。

GOEMONはねぇ・・・
和食とスペイン料理をどちらも、フルコースでいっぺんに食べるようなてんこ盛りの内容でした。
ホンマね、刺身と生ハムを交互につまみ、寿司を食べながらパエリアも食べ、饅頭もチュロスも頬張る、そんな感じ。

傑作なのは、この演目って初演は大塚国際美術館(徳島)のシスティーナ・ホールでやったって事!
システィーナ礼拝堂があるのはバチカンで、独立国家ではありますがほぼイタリア。そんなシスティーナ礼拝堂を模したシスティーナ・ホールで歌舞伎とフラメンコが融合した公演をやるってつまり、イタリアンレストランの中でお寿司とパエリアを提供するようなもんです。
いいですねぇ、これ、いいですよ!
私は「世界のごちそう大集合」なんてテーマのバイキングが大好きで、生ハムと刺身とカルパッチョを食べながらドイツビール、みたくさらに他国を乱入させたりするのがすごく好きなんです。
GOEMONは私のような方にはとても楽しめるお芝居だと思います。

ただ、私は宝塚で美しい人達を拝む目が肥えていますので、役者さん達のビジュアルには困惑する時もありました。

まず今井さんがね、けっこう普通なんです。高身長っぽくも、腕脚が長くも見えない。173cmもあるそうですがそうは見えなくって。でもってちょうど昨日は40歳のお誕生日で、相応に年齢を感じさせるお顔立ちでした。
今井さんは神父でありながら石田局という美女と結ばれ子をなし、神父をやめて通訳として生計を立てて家族を守っていたのに、豊臣秀吉のキリスト教弾圧によって引き裂かれます。
でもこの石田局演じる上村吉弥さんがねぇ、どうにもこうにもその、あまりに高齢で(実年齢は66歳)、どう頑張っても、今井さんや豊臣秀吉を魅了する美女には見えないんですよ。双眼鏡を使うのが辛くなり裸眼で見ても、それでもやっぱり年齢が出ていました。
以前「日本振袖始」で、古希を迎えたタマ様がお姫様を演じる事にもたいがい驚きましたが、おそらく歌舞伎では「高齢女形が美女を演じる」って常識なのでしょう。だけどこんな設定は、本当に若く美しいジェンヌさん達が活躍している宝塚に慣れている私には違和感がありすぎるんですよ。上村吉弥さんは石田局の死後、名古屋山三という武士として出てくるんですが武士としては非常に素晴らしい役者さんなんですね。なので余計に「何故この人が美女を・・・」と思ってしまいました。

石田局のビジュアルへの拒絶感が拭えぬうちに、ストーリーは阿国という、これまた美女が出てくる段取りとなったので私としては随分ハラハラしたんです。ああまたどんなおばさんorおばあさん(正確にはおじさんorおじいさん)が出てくるんだろう、って。
だけど予想は嬉しく裏切られました。
あらまぁこの阿国、ホンマに美しいわ!若いし!
それになんと所作の美しい事。双眼鏡越しでも女性に見える!
というわけで大注目したのが、中村壱太郎さんだったんですね。31歳とやはり若い。で、調べましたら扇千景さんのお孫さんだと知りました。そしてさらに、豊臣秀吉を演じていた中村鴈治郎さんが壱太郎さんの父親、すなわち扇さんの息子さんだと知ったんです。
思いがけない宝塚との繋がりに驚きました。

驚きと言えば、トップスターであるはずの愛之助さんが1幕で、1時間ほど過ぎてようやく登場したんですよね。

1時間40分ある1幕ですが、1時間ほどしてようやく愛之助さんがチラと出て、その後またしばらく出なくなり再登場、トータルでも30分くらいの出演でした。
宝塚でも組子があれこれしてからトップスターがうやうやしく出てくるのは珍しくありません。だけど1時間待たせる事はありえないw
まぁその、歌舞伎ではこういった「トップスター登場じらし」も常識なのかも。獅童さんの超歌舞伎でも1幕では獅童さんがなかなか出てこなかったので。

とにかく刺激たっぷりな舞台でした。

そうそう、昨日は今井さんのお誕生日という事で、お祝いセレモニーもあったんですよ。
愛之助さんはトークが上手いですね。お芝居でも誕生日を祝うアドリブがうまいこと入っていましたし。一般家庭出身ながら超大物の歌舞伎役者となった愛之助さんです、あちこちで場を盛り上げ、タニマチを喜ばせるテクニックにも長けているんでしょう。

というわけでセレモニーで遅めの終わりとなり、記念にプログラムを購入して帰宅しました。
獅童さんの超歌舞伎の時は買わなかったんですよね。どうしてもバーチャルキャラには興味を持てなかったんです。音楽もおそらく、録音のみでしたし。
一方、GOEMONでは音楽もすごく充実していまして、バイオリンや三味線やギターの演奏を生で楽しめました。生フラメンコのシーンがタップリあるんですがこちらも生歌と生ギター添えですから迫力ありましたし。
もうとにかく出演者さんが多くって、どんな人達が出ているのか知りたくなりました。イヤホンガイドが紹介してくれたけど覚えきれなくって。
帰りの電車でプログラムを開き早速、壱太郎さんをチェック。次はダンサーをチェック。男役ジェンヌで目の肥えた私にも随分とスラッと見えた男性ダンサーがひとりいたんですよ。そしたらお名前は「三四郎」って。フラメンコダンサーのくせにこんな芸名つける?とひとり突っ込んでいましたw

そうそう、最後になりましたが、大阪松竹座の3階席には大きな欠点があるんです。

大阪松竹座の3階席の1列目、2列目は避けるほうが良いかも

転落防止でしょうか、このような透明板が設置されているんですね。
なので、3階席1列目に着席すると舞台すべてを透明板越しに観る事になります。非常に透明度が高く、双眼鏡を使っても全く視界を邪魔しない板ではありますが、気持ちとしては不快な仕切りのようにも感じます。
でね、その不快さを我慢できず、身を乗り出す観客がけっこう、いるんです。
1列目の観客にこれをやられると2列目の観客はかなり視野を遮られてしまいます。
なので大阪松竹座の3階席は3列目がベストだと私は思っています。5列目まであるんですが、5列目だとほんの少しだけ天井が見切れるような感じ。

GOEMONは1階席と、なぜか2階席も後部まですべて一等席扱いで、14,000円。3階のみ2等席で5,000円。
松竹のチケット代は謎めいています。とはいえいつも3階はエコノミーなので今後もここでの観劇がデフォになるでしょう。重くてデカイ双眼鏡で頑張ります。

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コメント

  1. こんちゃん より:

    関西の、たー様

    切れ味鋭いツッコミ記事、いつも楽しみに拝読しております。歌舞伎もシネマ歌舞伎専科の地方民です。(今度、先日好評だったらしい桜姫の上映があるそうで。見てみたいような、そうでもないような・・・)

    宝塚はトップは40歳までには退団しますが、歌舞伎界のトップとはすなわち人間国宝。60歳を過ぎてからが本番ですしね。世襲制で父親と息子の関係だからライバルではないし、待っていればいつかは襲名。

    お客さんも個人ではなくファミリーについていますから、家計として考えたら、息子が親を若くして下克上するメリットも乏しいのかもしれませんね。

    歌舞伎の伝統にあぐらをかかない、存続のための取組姿勢はすごいですよねえ。

    海老蔵さんの話になりますが、我が家で加入している生命保険の営業さんが、「海老蔵の歌舞伎公演の配信を無料で鑑賞できるキャンペーンをしていますよ」と知らせてくれまして、今度鑑賞してみるつもりです。オンライン限定で解説つき映像だそうで、イヤホンガイド解説つき中継のようなものなのでしょうか?

    感想は自分のブログか、あるいはまた、たー様が歌舞伎記事をUPされた折におじゃまするかもしれません。

    たー様は、南座の顔見世をご覧になるご予定はありますか?

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      「宝塚 ライビュ専科の地方民のブログ」管理人こんちゃんさん、こちらこそいつもお世話になっております。
      桜姫東文章、シネマ歌舞伎で上映されるんですね。教えてくださりありがとうございます。春ではあれ詳しい日程はまだ決まっていないようですね。ええっと、現在のにざたまはドアップは厳しいかも?と私は思うのですが、怖いもの見たさな気持ちもあります。

      高齢の役者が若い美男子・美女として登場する・・・私はこういった「歌舞伎のお約束」を今後、受け入れる事が出来る気がします。
      これもすべて宝塚ファンとなり、いろんな「お約束」のあれこれを肌で感じているから。宝塚には宝塚の、歌舞伎には歌舞伎の「お約束」があって当然だろうと思うんです。
      だけど、ソロ活で楽しむだけ。
      某ジェンヌさんすら「高齢トップ娘」なんて言う我が娘に、GOEMONの石田局を受け入れる事が出来るはずありませんからw

      某生命保険主催の海老蔵さんのオンライン公演、パスワードが記載されているチラシがやたらとフリマアプリに出品されていました。最初の配信は明日ですよね。
      タマ様の本を探しだしたあたりからやたらと「おすすめ」で表示されるようになりましてw
      激安だったし興味はあったものの、生が好きな事もあって購入は見送りました。
      このオンライン公演の解説は海老蔵さんがするようですから、アクが強いかも?勝手な想像ですけどw イヤホンガイドの解説は専業の方が担当しているらしく、NHKアナウンサーのごとくクセがありません。

      オンライン公演の感想、是非、記事にしてくださいね。
      ただ、最初にお伝えしておきますがビュー数は期待出来ないですよ。参考までに、このGOEMONの記事のビュー数は現在1,000を切っています。力作なのになぁw

      南座の顔見世、すごく観たいんです。三部通しだと10時間ほどの滞在になりますね。
      大阪松竹座では新年早々にタマ様の藤娘がありこれまた観たいし。
      だけど現時点ではわからないです。気持ちだけは十分にあるのですが・・・いろいろ肩身が狭くって。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

  2. おかちゃん より:

    歌舞伎の舞台を未体験なので参考になります。
    私もシネマ歌舞伎の観劇専門です。そちらの方が表情が楽しめるのとコスパも自分のお財布に優しいというのが理由ですが、いつかは東京まで観劇に行ってみたいものです。役者の名前が覚えられてからで良いかなと思っています。

    歌舞伎も三階さんという役者や、三味線などの鳴り物の奏者の生活を守ろうと思ったらそのうちに文楽みたいに国の予算を貰わないととなるのかなあ。

    そこから派生の新派の演劇もどうなるのかしらとかお芝居の世界も闇が広がりそうな…。

    歌舞伎は市川染五郎さんに市川団子さんも若手の若手でしっかりとお育ちなので楽しみな世界です。

    宝塚歌劇団とまた違う楽しみかたがありますね。

    • 関西の、たー 関西の、たー より:

      おかちゃんさん、「三階さん」って映画俳優で言う「大部屋俳優」なんですね。舞台の大部屋が三階にある事が多いからだそうで。GOEMONでもたくさんの三階さんが頑張っていました。
      楽器の奏者は、バイオリンやギターは外注っぽいけれど三味線はお抱えでしょうね。
      そうですね、三階さんや鳴り物奏者さんにも生活がありますもんね。
      バーチャルトップ娘だった獅童さんの公演は三味線奏者もバーチャルで、これだと生活の面倒はいらないでしょうが・・・私は物足りなかったです。タマ様公演とGOEMONには三味線奏者の独奏タイムがあり、やっぱり生が良いなと思いました。今の私はとにかく生が良くて、それゆえシネマ歌舞伎にもあまり興味が沸かないです。映像は過去の作品に絞ろうかなと。そうそう「天守物語」の円盤、観ましたよ!この頃のタマ様を生で観たかったなぁ、ホンマに。あと、若くてポッチャリな宮沢りえさんが可愛らしかったです。

      たぶんですが歌舞伎界は、タマ様だけでなく全体的に役者の高齢化が進んでいるのでは。私は高齢女形の美女設定を受け入れますが、若い新規ファンを得るのは難しい気がするんです。
      やっぱ、若いファンを得るには若手役者がよろしいかと。はい、染五郎さんや團子さんのような方々ですね。今チラと調べただけですがこのおふたりは仲良しのようですし将来が楽しみです。
      国はもともとヤバい懐具合なのにさらにコロナの大打撃です、今後新規に、文化のためにお金を使う可能性は低い気がします。
      そういえば政治家も年寄りが多すぎる。もっと若手に頑張ってもらいたいです。

      はい、歌舞伎には宝塚と違う楽しみがありますね!
      遅い観劇デビューゆえ情熱はあります。これからも自分のペースでいろんなジャンルの観劇を楽しみたいです。

      いつもありがとうございます。
      今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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